628人が本棚に入れています
本棚に追加
ルージェが起きてから一番にする事はフェラルドの寝室へと向かい起こしてあげる事だ。
「フェラルド」
ドアをノックするとフェラルドがルージェを呼び、中へと入るとベッドから降りて「おはよう」とルージェの頬に口づけをくれる。
それは親しい者同士がするただの挨拶なのだが、フェラルドと交わせるという事がルージェには嬉しい行為なのだ。
「おはようございます、フェラルド」
お返しに今度はルージェから頬への口づけをしフェラルドの着替えを手伝った後、食事を摂る為にダイニング。ルームへと移動する。
家族が揃う貴重な時間故に、食事をしながら話をする。
フェラルドと弟のグレオの二人とも王宮騎士だが所属が違うので情報交換をしたり、グレオの子供たちは学園の事や友達の事、義母や義妹が家の事や周りで起きている事を話す。
ルージェはいつも話を聞く一方で。今日も何も話すことなくこの時間を終えるだろう思っていた。
「ルージェからは何もないか?」
と尋ねられ、まさか話を振られるとは思わずぐっと喉が詰まる。
「些細な事で良いんだ。何か気が付いた事や不便だなと思う事だって」
そう促されて、皆が自分を注目している事に緊張してしまい、ありませんと俯く。
皆が意見を言いあう場の中に、ルージェも入れるようにと気遣ってくれたことだろう。
その気持ちが伝わってきて、余計に申し訳ない気持ちになってしまう。
「すまない。ルージェを困らせるつもりで言ったのではなく……」
おろおろとしだすフェラルドに、ブフッと吹き出す声が聞こえてルージェはそちらへと顔を向ければ、グレオが口を押えて笑いを抑えていた。
「これ、グレオ。笑ったらいけませんよ」
というマリーシャも口元を抑えて笑っていた。
「母上、グレオ……」
二人を睨みつけるフェラルドだ。
何故、二人が笑っているのかが解らず、隣に座るグレオの妻であるダリアを見れば。
「ふふ、すっかりルージェに骨抜きですわね、フェラルドったら」
「え?」
「ダリアっ!!」
おほほ、あははと笑う三人。
「いくぞ、ルージェ」
手を握りしめられて共にダイニング・ルームを出る。
フェラルドを見上げれば頬が真っ赤になっていて。
それを見たルージェはダリアの言葉を思い出し、フェラルドに負けないくらいに顔を赤くする。
もしもその言葉が本当ならば、そうならどんなに嬉しいことか。
最初のコメントを投稿しよう!