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時にお茶を入れさせたりしたこともあった。フェラルドは自分の好みの味を覚えてくれたことが嬉しかった。
仲間といるときに見せる笑顔はないが、フェラルドが自分の為に何かをしてくれることに幸せを感じていた。
王子とその身を守る騎士。それでしかない関係だがそれでも傍にて話をできるだけで幸せだと思った。
なのにそんな幸せを奪おうとする者達がいた。
ルージェを入れようと貴族の中でも金と権力のある男が大臣たちに圧力をかけ始めたのだ。
そろそろ手に負えなくなりそうになり、このままでは望まない婚姻をさせられそうだったので大衆の面でルージェは武闘大会を開くと宣言をしたのだ。
宣言した言葉をなかったことにさせない為の、ルージェにとって一つの賭けだった。
すぐさま大臣たちにより武闘大会の宣言は撤回されそうになったが、国民の盛り上がりの前に言葉は撤回することが困難になり開催される運びとなった。
一先ずその男と結婚しなくて良くなっただけで、大会の勝者と婚姻を結ばねばならない。結局、行きつく先は同じ道なのだ。
だがこれはチャンスでもあった。
ルージェが密かに慕う相手と婚姻を結べるかもしれないというチャンス。
それをモノにする為にルージェは王太子に頼んだのだ。どうかフェラルドを大会に参加させてくれと。
王宮騎士隊長であり、腕の立つ彼ならば反対はしないだろうから。
王にこの件を押し付けられてどうしようかと困っていた王太子にとっては、それは良い提案に聞こえたのかもしれない。
「そうだな、騎士隊長が参加するのは良い案だ」
呆気ないほど簡単に口車にのった。
それに王太子の頼みをフェラルドは断ることなどできない。
その立場を利用し参加させようだなんて狡い考えだが、こうでもしなければ彼は大会に参加しないし全力で戦ってはくれないだろう。
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