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武闘大会の日。
悲しくも天候に恵まれ、武闘大会日和となってしまった。
気が重い。戦う前はため息ばかりついていたが、いざ剣を握りしめれば戦いに集中する。
フェラルドの剣術の腕はかなりのものだ。一方的な試合展開は王宮騎士隊長の強さを見せつけるかのようだった。
どんなに大きな相手にも引くことはなく攻めていく姿は観衆を味方につけた。
コロシアムがフェラルドに対する声援に沸き、優勝を勝ち取った時には「おめでとう」という言葉が飛び交った。
優勝の座を勝ち取ったフェラルドはその日に行われた王宮での祝賀会に参加していた。
王から賛辞と感謝の言葉をもらい、感謝の言葉には一瞬疑問に思ったけれどありがたく頂戴する。
心から賛辞をおくる者、そして結果を面白く思わない者からは妬みを含んだ目で見られる。
フェラルドがいらぬ恨みをかう羽目となってしまった原因を作った張本人がグラスを手に傍へとやってきた。
きらきらと輝く淡い色の生地で作ったやわらかくふわりとした衣装が美しいルージェにとても良く似合う。
「おめでとう、フェラルド」
グラス掲げて微笑むルージェに周りからため息が聞こえる。
「ありがとうございますルージェ王子」
手を胸に当ててお辞儀する。
「貴方が武闘大会にエントリーし、優勝を勝ち取ってくださり私はとても嬉しいです」
安心しましたと、胸に手を当てて微笑むルージェに、フェラルドは心の中で舌打ちする。
彼ならばいい縁談話がたくさんあっただろう。だが、ルージェの我儘で王や王太子を困らせただけでなく、自分までもが巻き込まれる羽目となったのだから。
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