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祝賀会には各の騎士隊長と南からは副隊長が出席していた。
皆から祝辞を受ける度、胸にもやもやしたものが溜まっていくようだ。
息苦しさを感じてそっとバルコニーへと移動し、一人きりになるとやっと息が付けた。
「主役がこんな所に居ていいんですか?」
そう声を掛けてきたのは副隊長で、今、もっともフェラルドの気持ちを理解してくれている一人である。
「少し休憩していただけだ」
とテラスに両腕を置いて華やかなパーティから背を向ける。
副隊長も同じような恰好をし隣に並ぶ。
「物好きですね」
「言うな。この後のことを考えると嫌になる」
これは本意ではない。そのことは長い付き合いながら騎士の面々はなんとなく理由も悟っていた。
結局は自分たちが良く知った、それも身分もそれなりにある相手の元へと嫁がせたいという理由だろう。
「それにしても……、あの我儘坊ちゃんがやっていけるんでしょうかね」
俺達としては嫁いでくれてありがたいですがと部下の一人が言う。
「無理だろう。今までのような暮らしはさせてはやれぬからな」
フェラルドは長男でありリース家を継ぐ身。その伴侶であるルーシェはフェラルドのかわりに家を守らねばならない。
その為に覚えなければいけない事柄は多く、今まで様に我儘など言ってはいられない。
きっと慣れない暮らしに音を上げてすぐに離縁を申し渡されよう。
だが、フェラルドの予想に反してルージェからは離縁の申し立てをされること無く日々は過ぎていった。
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