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「寂しい思いをさせてしまってごめんなさい」
そう頭を下げるマリーシャに、いいえとルージェは首を振る。
「違うんです、私が悪いんです!」
忙しいフェラルドを随分と困らせたし迷惑もかけた。でも、ルージェはただ一緒に居たいが為にした事。
それが我儘だと言う事を解っていたけれどやめられなかった。
「用事がない限りフェラルドに会う事が出来なくて、だから彼の前では我儘な王子で居たんです」
「少しやりすぎてしまったのね」
「はい。私のするお願いは聞き入れて貰えないので、命令でしかあの人と話をしたり会う事が出来なくて」
それがまた嫌われる原因だったのだろうと、今更ながら落ち込む。
「それに武闘大会だって、兄上に頼まれたからエントリーしたまでの事ですし」
フェラルドに武闘大会へと出場するようにと、王太子に頼むように仕向けたのは自分なのだ。
結局、自分の都合でフェラルドの人生を奪ってしまった。
我儘な男を伴侶として迎えねばならないフェラルドの気持ちを考えたら当然の事なのだ。
「王太子に頼まれたからとて、こんな形で逃げ回るなんて許される事ではありません」
気のせいだろうか。 マリーシャの目が笑っていないようなきがする。
すぐに表情は優しいものへとかわるが、ルージェはマリーシャを怒らせてはいけないということを学んだ。
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