我儘王子と騎士隊長(フェラルド)

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我儘王子と騎士隊長(フェラルド)

 白銀の衣装を纏う王宮騎士は東西南北に宿舎を構えており、東は雷、西は風、南は水、北は炎を紋章とし、色別された腕章をしている。  その中の一人、南の隊長であるフェラルド・リースは王太子の言葉に戸惑いを隠せないでいた。  まさか自分に武闘大会への参加の話がこようとは。 「王太子、何故、自分が?」 「其方は王宮騎士隊長であるしルージェに仕えていて互いに良く知って仲であろう?」  騎士隊長のエントリーに誰も文句が言えぬだろうと、まるでナイスアイデアだとばかりの表情を見せる。 「王太子、私はまだ若輩者です。故にルージェ様を伴侶を決める為の武闘大会に参加することなど恐れ多いことです」  この話はお断りさせて頂きますと畏まれば、 「なんだ、好きな奴でもいるのか?」  と聞かれてぐっと喉が詰まる。今まで友達以上の関係になった女性はおらず、現在恋人募集中の状態だった。 「ルージェは可愛くて賢い子だと言うことを、フェラルドは良く知っているだろう」  王太子のその言葉にフェラルドの表情がかたまる。  確かにルージェは美しい容姿をしているし、外の評判はすこぶる良い。  ただそれは内側のルージェを知らないだけで、南の騎士達は彼がとんでもなく我儘で面倒なことを知っている。  なので武闘大会に南の騎士から参加すると言う者は一人もいなかった。 「頼む! 一人の兄としてルージェが心配なんだ。どこぞかの馬の骨とルージェを婚姻させることはできぬ」  両手を強く掴み何度も頼むと言われ、臣下として断ることなどできるわけがない。  自分にも弟がおり、兄として弟を想う気持ちは痛い程わかる。 「わかりました。武闘大会に参加いたします」 「おお、ありがとうフェラルド」  安心したとばかりにホッと息を吐き胸をなでおろす王太子に、片膝をついて手を胸に当て深くお辞儀をする。  王太子はフェラルドの肩に手を置き、頼んだぞと言うと立ち去っていった。  暫くはお辞儀をしたままのフェラルドだったが、そのまま深いため息をつく。  隊長クラスの者で唯一の独身者である北の騎士隊長は想い人が居るので出場はしないだろうし、王太子が圧力をかけて自分以外の騎士の出場を制限しそうな予感さえする。 「厄介なことになった」  どんなに婚姻を望んでなくとも、彼には勝ち続ける道しか残されていない。  南の騎士隊長として負ける訳にはいかないからだ。
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