黄昏の君

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扉の向こうに続くのは滔々たる暗黒の深淵へと続く石階段である。 立ち止まって眼を凝らしても、見て取れるのは階段が緩やかな螺旋を描いて遥か地下深くへと繋がっているらしいという事ばかりであった。 王子(みこ)は手燭で足許を照らしつつ、慎重に慎重に、黒い(きざはし)に足をかけ冷たい闇の水底へと潜ってゆく。 既に主君の足音も衣擦れも聞こえなかったが、必ずや彼女に(まみ)える事が出来るという確信を(よすが)として未知の領域を進む。
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