黄昏の君

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一年前、大連(おおむらじ)に連れられて王子は初めて魔王の竜顔を拝した。 神代の古より続く人と魔との相剋に幕を下ろすべく『魔王』は人族の王に和睦を求めた。 従える眷族も知ろしめすべき領土も喪い、ただ一人、黒い森の奥深くの聖域に君臨する『魔王』は誇り高い降伏を選んだのである。 天にみなぎる霊気は薄らぎ、地を廻る竜の息吹も殆ど渇れ果てた。 巧妙な群れを構築する術を得た人族は木から石そして鉄を得て森を切り開き、人族の(よき)は此の数代で峻厳なる〝悪神〟の森の眼前にまで迫った。 これ以上の抵抗の無意味を観じた『魔王』は人界の大王(おおきみ)に黒い森と王城の保全、そして〝侍従〟の献上を条件に幽居を申し入れ遂に厳かに敗北を宣ったのであった。
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