黄昏の君

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存外こどもっぽいお人だ、と言ったらきっと彼女は怒るだろう。 厳かで、凛然として、たおやかで、優しくて。王の威厳みなぎるかと思えば無邪気な戯れに夢中になる。 まるで黄昏どきの空のいろの様に陛下は複雑な佇まいをお見せになると、暁は思う。 『まるで黄昏どきの空のよう』 一年前、『魔王』と共に初めて謁見した時、暁が真っ先に懐いた感慨は斯くの如きものであった。 磨きあげられた黒妖玉の高御座(たかみくら)に座した『魔王』の豊かにたなびく白金色の髪の煌めきと切れ長の眼に宿る紫紅に燃える瞳の風情は、少年に夕焼けを想起させるのに十分であった。 そして『魔王』に言い知れぬ慕わしさを懐くのにも。 少年の本能は忽ちにして悟ったのである。 悲嘆も歓喜も、貧しい者も富める者も、全ての感情を包み込み全てのものを慈しむ、あの壮麗なる夕焼けの様に彼女は優しいと。 終わりの見えない孤独な日々にあって、何時も変わらず己を包み込んでくれたあの輝かしい炎の様に、彼女はあたたかいと。
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