黄昏の君

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「陛下!御無体はおよしくださいませ」 頬をつねられた儘、暁は顔を真っ赤にして抗議する。如何に王であろうと食事中の家来を苛めてよい法など何処にあろう? 「そなたの父は『美髯王』と称されるそうだが、そなたも何時かは髯が生えるのかな? 想像もつかんが、人はあっという間に変わってしまうゆえな」 暫く頬の肉をきつく摘まんだ儘の『魔王』は侍臣の憤慨など意に介するふうもなく、独り言つが如くに呟いて微かに首を傾げた。 「わたしは、よく母親似だと言われておりました。父にはまるで似つかぬとも」 漸く主の指先から解放された頬を抑えながら、暁王子もまた独り言つかの答え、それきり黙して再び爵を傾けた。
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