黄昏の君

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暁王子は人族諸王の王と身分賤しき官女との間に生まれた妾腹の王子(みこ)である。 母親の出自ゆえに、王族のみならず群臣らにさえも疎み軽んじられ王宮の奥で肩身の狭い暮らしを余儀無くされてきた。 母御は既にみまかり、父王との関係は疎遠。 王子は諸卿百官犇めく宮廷にあって正しく孤独の身の上であった。 ほんの戯れ言のつもりで弄した言葉が、思いがけず暁の心を曇らせたのを悟った『魔王』は自らの短慮を呪った。 「でも、わたしが髯をたくわえたら、きっと滑稽でございましょう」 掛けるべき言葉を探しあぐねる『魔王』を救ったのは、思いがけぬ程快活な少年の声であった。
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