黄昏の君

8/21
前へ
/23ページ
次へ
暗転した主の胸中を察し、忽ちにして道化てみせたのだ。 このか細い身体で、彼は一体どれだけの感情を飲み下してきたのであろう。 己とは比べるべくもない短い生の間に。 ならば、わたしとの日々は彼に一体どんな変化をもたらすのであろう? その行き着く果てを、日々の移ろいの巨細を見届けたいという熱情の熾火が『魔王』の胸の奥処に宿った。 「そうだな。きっと滑稽であろう。 だが、それも一興だ。いずれ見せてみよ。腹のそこから笑ってつかわす」 『魔王』は去来するくさぐさの情動を振り払い、努めて明朗な笑顔を以て寵臣に応えてみせた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加