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ガキ親父と焼き鳥とビール
ある日夕方ガキ親父が、喜び勇んで焼き鳥を買って帰ってきた。
まだ熱くて作りたてほやほやだ。
見るからにそこらのチェーン屋台で作られた物と違っていた。
いい焼き加減で、炭臭くないし、てりてりしていて、すぐにでも食べたくなる。
「ほらちなこ、焼き鳥だぞ、あそこの近所にできた店で買ってきたぞー。どれどれ、どんな味だ?食おう食おう!ビール冷蔵庫から持ってきてー」
にかにか笑ながら、どっかり座り、自分は串を一本早くも手に取って、ガキ親父が命令する。
私が急いでビールを取ってきたときには、至福の顔でモグモグしていた。
「うめぇー!やっぱ、焼く人が焼くと全然違うねぇ!ちなこなんで食わないの?凄く旨い!」
君のビールを取りにいってたからでしょうが。
しかも。
「ちなこー。ビールは一本ずつ持ってきてよ。温くなるだろうが!」
わかんない奴だと言わんばかりの物言いだ。
どっちがだよ。
焼き鳥ゆっくり食べたいから二本持ってきたんだよ。どうせ、一本目はすぐなくなるんだしいいじゃないか。大体、そんなに拘りたいなら自分で持ってきてよ、なんで私に言いつけるか?
「一本しまってきて!速くー!」
ぷしゅ!とビール缶をあけながら、あくまでも私にしてほしいガキ親父。
無視して焼き鳥を一本手に取ったら、拗ねた。
「なんでビールしまわないのー!焼き鳥食ってる場合じゃないだろ!」
グビビグビビ、ビールを喉に流し込みながら文句を垂れる。
それでも無視して焼き鳥を食べた。
あ!本当だ、なにこれ、この塩ねぎま、凄く美味しい!うわー、美味しいなあ!
「ほらあ!飲んじゃったじゃんか!もういいよっ!せっかくちなこのために焼き鳥買ってきたのに!」
「私のためかーーい!?ならゆっくり食べさせてよ」
「それはそれ、これはこれよ。いいよもうっ、それも飲むからちょうだい!」
手を伸ばせばすぐとれるものを、どうしても私にやってほしいらしい。
ガキ親父め!
「取ってくださいって言いなさい」
私がモグモグしながら怒って言うと、ガキ親父は膨れた。
「嫌だ!とって!」
「食べ終わるまで待って」
「とってよう!はーやーくー!」
足をバタバタ。
子供がやれば可愛いけれど、身長189cm、102kgのマッチョなオジサンがそれをする姿は大変情けない。
うるさいなあ、ほら!
私がビール缶を渡すと、大急ぎで手に取り、ぷしゅっ。
計30本の焼き鳥は、殆んどガキ親父のお腹に消えて、はやっ!とおもって時計を見たら、まだ20分も経っていない。
もう最後の一本しか残っていない。食べなくちゃ。
「あああ!とられたあ!」
今にも泣きそうな顔でガキ親父が叫んだ。手にはまだ食べかけが残っている。
ふん、食べちゃえ。
「全部食べないで!半分くれえー!」
ガキ親父は手に持っていた串を慌てて平らげると、懇願してきた。
しょうがないから、あげたよ。
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