病気のガキ親父

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病気のガキ親父

「あーーーーあーーー、痛いー」 ガキ親父が布団のなかで呻いている。 「熱もあるー咳止まんないー」 さてさて、掃除機はかけ終わった。 次はこの漫画雑誌月刊マガジンをまとめよう。 明日は金曜日だから、集積所に持ってかなくちゃ。 「背中痛いーー!腰痛いーーー」 ケホケホケホケホ! 「咳すると痛いーーー」 こっちのビール缶も全部片付けよう。一個、二個、あらら、ロング四缶も空にしてやがる。 こんなの自分で片付けてほしいなあ。 「熱が高いーー、頭痛いーーーー」 呻きながらこっちをチロチロ見ているガキ親父と目が合ったので反らした。 拗ねたガキ親父が半べそで私を呼びつけた。 「ちなこーーー!痛いようー、無視するなあーーー!」 「もーー!どうしてほしいの?うるさいなあ!」 ガキ親父はメロメロに甘ったれた声で頼んできた。 「腰に湿布貼ってくれえ☆」 普段仕事をしている時のガキ親父は、バーチャルゲームに登場する鬼軍曹のようにCOOLで格好いい。 身長189cm、体重102kgの体をフルに生かしてガンガン働き、ブルドーザーのように仕事をこなすペンキ職人だ。 肩書きは一人親方。 キビキビと指示を飛ばし、手伝いに来てくれる職人さんを、皆、まるで訓練したような連携ぶりで突き動かしていく。 よくまあ、あんなに個性的な人たちを纏められるもんだ、感動すらする。 ご近所さんたちからは、特に男性から「旦那さん格好いいよね」とよく言われる。 誰がこんな実態を知ろうか、想像しようか? 泣くなよガキ親父、こっちが泣きそうだよ、あーあ。 情けないったらありゃしない。 「どこが痛いの?」 「この辺とこの辺…」 湿布をペタリ。 超満足そうなガキ親父。 「あのねえ、そんなに調子悪いならゆうべさっさと寝ちゃえば良かったじゃない。オンライン麻雀やってる場合じゃないでしょう」 「だって奴がまた勝負仕掛けてくるんだもん!なんかさあ、顔見たことねえから余計闘志わくじゃんか!アレはあれ、これはこれだ」 だったら大人しく眠っててくれないかなあ~。 どこの「大きいおともだち」だよ、全くもう。静かに掃除させてくれえ!ほとんど君が散らかしたものばっかじゃんか。 「ちなこー、腹減ったー、うどん食べたーーい」 「あとでね。いま缶を片付けてるから」 「食べたいー!腹へったあー!」 「わかったから待ってってば」 「うどん食べたーーい」 私も大概甘いよね、あんまりあわれな声出すから、結局空き缶の袋を玄関において、ガキ親父を黙らすためにうどんつくってあげたのさ。
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