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いつもの5人
「おりゃーーー! くらえ、タイチ!!」
イチヤの勝利の雄叫び。
「数字10枚重ね出し! か~ら~のおぉぉ、スキップ×4、リバース×3、VNO、はい上がり!!」
「ま・ぢ・か!? ぐわぁぁぁぁ!」
指をすり抜けて落ちる、タイチの残り一枚のカードと、断末魔の叫び声。少年の頭と肩がガックリと下がる。
「イェ~イ」
スポーツ刈りのタイチの頭越しに、イチヤはボディビルのポーズで勝利を誇った。
「ねえ、もう少し静かにしてくれよ! 集中できないよ」
生真面目なトシカズから、抗議が入った。
「二人とも休憩はそろそろ……ねえ、宿題を一番やらないと駄目な人、タイチなんだよ?」
これまた優等生のマリアらしい説得が続く。
「わかった、わかった。あとひと勝負だけ! これで逃げたら、じいちゃんに申し訳がたたねぇ」
タイチに反省の色はなかった。意味の分からない言い訳からすると、すぐに中断する気はさらさら無いようだ。
「はっ、はっ、はっ。受けてた~つ! ぞーんび、にゃ!」
こちらも、はなっから遊ぶつもりのイチヤ。そもそも彼の場合、学校の成績は十分に優秀なので、この勉強の集まりに参加する意図がみんなとは違っていた(タイチとじゃれ合う為だ)。ちなみに最後の台詞を説明すると、イチヤはゲームのキャラ『猫娘ゾンビ』の大ファンだった。
「次はイチヤの変則ルール、無しだかんな! だいたい最初からおかしいと思ったんだよ……場に5があって、足して5になるカードが手持ちにあれば、一回で何枚でも出せるとかさ!」
「最初にそれでもOKって言ったの、タイチじゃん! 僕が考えた『イチヤ・スペシャル』ルールだぜ。ゲームがスピーディに終わっていいだろ?」
イチヤは悪びれる様子もない。それを見てまたタイチが噛み付く――そここらまたグダクダ。おかげで勉強部屋は一向に静かになる様子がなかった。
そんなやり取りを眺めながら、私は深い溜め息をついた。
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