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「あら、本当に帰ってきたわ! よかった……よかったわねぇ、クロウ! 緑里!」
「ほら、クロウ。お母さんだよ、我が家だよ。ただいまーって」
緑里の家へ戻ると、緑里の母親は泣いて喜んだ。
クロウが帰ってきたことも当然だが、娘に屈託のない笑顔が戻ってきたことも嬉しいのだろう。
当のクロウも尻尾をピンと立てながら、辺り構わず頭を擦り付けては鳴いている。
「本当にありがとうございました、二宮さん。クロウもこうして探してくださって……娘も私も、心から感謝しています」
親子そろって深々と頭を下げるが、吾郎は大げさだと慌てて止める。
「僕の働きもあるかもしれませんが……運がよかったのと、何より緑里ちゃんの努力ですよ」
吾郎は緑里の顔を見た。抑えようもない喜びでほのかに頬が綻んでいて、出会った当初とは比べ物にならない。
困って悲しんでいた顔が笑顔に変わった事こそが、吾郎にとっても何より嬉しいことだった。
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