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憂鬱
今日はとても憂鬱な日
いつもなら私が送り出す人は多くて日に一人いるかどうか、だけど今日は
「お姉ちゃん……痛いよ」
「グスッ……」
「僕たち、どうなっちゃったの?」
こんなにも多くの子どもを送る事になってしまった。
「ねえ、みんな。何があったのか教えてくれる?」
小さい子はまだ2桁にもいっていないのだろう。その小さな体に刻み込まれた大きな傷は痛々しくて、もう見ていたくもない。
「……わたし達はただ学校にいただけです。それが知らないうちに」
この中で一番大きな子──最年長だろうか──が答えてくれた。
「本当に何でも良いの、何か変わった事とかでも」
「そういえば」
「うん。なに」
目線を合わせるために屈み姿勢になって、真剣にこの子の言うことを聞いた。
「あの時、先生達が慌てていて、私たちに『逃げろ!』ってそしてそのまま気を失って……」
ああ……これはきっと……。
「ありがとうね。怖かったよね。でも、もう大丈夫だからね」
「気がついたら、誰もいないし、でも、わたしはこの中で一番のお姉ちゃんだから」
必死に泣くのをこらえて、抑えきれない涙が溢れだしている。私はその子を思いっきり抱き抱えて。
「大丈夫よ、もう泣いていいから」
と、そうすることしかできなかった。
子ども一人でも、送り出すのはとても辛い。そして、それが何人もであると……もう何も出来ないと分かっているのに、そのような自分がほんとに嫌になってしまう。
私の胸で思いっきり泣いてたこの子も、泣きつかれてしまったのか、いまはもう静かになった。
「落ち着いた?」
「うん。ありがと」
「それじゃあね、最後にもう一つだけ頑張ってくれる?」
「うん。わたし、お姉ちゃんだから」
「この先にね、お花畑があるの。そこで皆を連れて待っていてくれる?」
「お姉ちゃんは来ないの?」
優しくほほえみかけ、頭をなでながら続けた。
「ごめんね。私は行けないけど、そこからまた別の人が来てくれるから、そこからはその人についていって」
「うん。わかった。待ってるね」
この子は、笑っていた。何が起きたのかわからない不安でいっぱいだったのに、それを表に出さずに。
「みんな集まって」
その掛け声のもとに、泣いていた子達はやって来た。まだ子どもなのに、大きい子は小さい子をあやしながら。みんな一緒に。
「それじゃあお姉ちゃん。またね」
「ええ、またね」
大きく手を降りながら、子ども達は向かう。私はそれを見送ることしか出来ない。けれども。
最後は笑顔で送り出そう。それが私にできることなのだから。
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