こんな展開になるとか聞いてない

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こんな展開になるとか聞いてない

 なんてことだ、と昂大(たかひろ)は青くなる。  脱がされたスウェットが手首に絡みつき、匡一(きょういち)がそれをぐるぐると巻きつけて締め上げてしまったので、両腕が動かなくなってしまった。服をこんな風に使われるとは思わなかった。 「う、あぁっ! やめ……ッ!」  剥き出しになったまだ子供の丸みを残した胸に、匡一の舌がぬるりと這う。不快さに昂大の身体が竦み上がる。  拘束された手首の間にステンレス製の丈夫な定規が通され、それがパイプベッドの支柱の隙間に渡されて、昂大の手首はそこに固定されてしまっている。  たかがスウェットを巻きつけただけの拘束、と侮るなかれ。意外にも解けないものなのだ。  これでは殴り飛ばしたくても殴れない。頭の回転のいい男は、こんなところにもそれを発揮するらしい。 (なんでこんなことになったんだっけ?)  匡一の愛撫から逃れようと身を捩る度に支柱と定規がぶつかり合い、カンカンと高い音を響かせる。それが耳障りで、昂大の緊張を更に高めた。  自分の胸に吸いついている兄の姿を他人事のように眺め、どうして、と自問を繰り返した。  始めは、ちょっと揶揄ってやるつもりだっただけだ。潔癖に感じる兄に下世話な話題をぶつけたら、きっと厭そうな顔をするに違いない。それをニヤニヤと小馬鹿にしながら眺めてやろう、とそんな些細な悪戯心があのような質問をぶつけた。  性行為(セックス)に興味があったのは本当だ。そういう年頃なのだから仕方がない。学校でも、放課後なんかは友人達とそんな話ばかりしている。彼女などというものがいない昂大達は、そういった経験をすることはまだ先のことで、ただ興味と妄想ばかりが膨らんでいく。そんなこんなも、すべては『そういう年頃なのだから仕方がない』のひとことで片付けられてしまうのだ。  クラスメイトの中で、何人か経験済みの奴がいる。この好奇心を満たす為にそういった連中から話を聞くこともあったが、誰に聞いてもどうにも自慢臭くて、なんとなく熱が醒めてしまう。それが厭でうんざりしていたとき、そういえば、匡一はどうなのだろう、とふと思いついた。  訊いてみたら、きっと厭そうな顔をするに決まっている。いつものあの整ったポーカーフェイスを崩してみるのも面白いかも知れない、と考えついたのが今日の帰り道だった。  そのときに、兄が自分の乳首に吸いついている姿など、想像することも出来なかったのは当然だ。 「……もっ、やめ……ろ、おぉ」  執拗に施される胸への愛撫に、昂大は悲鳴を上げた。  胸を触られているだけだというのに、何故か下腹部の方が疼く。モヤモヤと変な感覚を臍から下あたりに漂わせ、その妙な感覚にほんのりと心当たりのある昂大は、泣きたい気持ちになった。  何故こんなことになっているのだ。直接ペニスに触れられたわけでもなく、いやらしい映像などで興奮したわけでもないのに、昂大の幼い性器は確かに勃起の兆候を感じさせているのだ。  気づかれないようにもじもじと脚を擦り合わせながら、匡一を睨みつけた。 「いい加減にしろよ、兄貴! こんな……ひゃあッ!?」  罵声を浴びせようとした声が、唐突に悲鳴に変わる。その甲高い声に、上げた昂大自身も目を丸くした。  なに、今の声!と慌てて唇を閉じ合わせると、匡一が楽しそうに笑って見下ろしてきた。 「可愛く鳴いたな、昂大?」 「なん……ッ、ふざけんな!」  頬を朱に染め、兄の腕を振り払おうと身を捩る。  いったいなんだというのだ。今の声が自分の出した声だなんて、昂大には到底信じられなかった。あんな甲高くて、女の子みたいな声を。  ふふっ、と匡一が微笑み、髪を掻き上げる。 「本当に可愛いなぁ、タカは。胸だけでこんなに感じるなんて思わなかった」  そう言うと、先程まで胸を愛撫していた手が、昂大の股間に触れた。ひっ、と小さく悲鳴を上げ、身を竦ませる。  そんなところ、他人に触らせるものではない。たとえ血の繋がった実の兄でも、そんなところに触れられるなんてあり得ない。  スウェットの上からその形を確かめるように撫でさすり、そのまま流れるような動きでするりとウエストのゴムを引き下げた。 「ぎゃあッ! マジやめろよ兄貴! ふざけんな!」  その兄の暴挙を止めようと、昂大は激しく身を捩る。だが、そんな抵抗は微々たるもので、匡一は難なく弟のズボンを引き下ろしたのだった。  現れた青いチェック柄のトランクスの薄い布地の中央部が、僅かというレベルではなく、はっきりと盛り上がっている。昂大は真っ赤になった。 「胸を触られるの、気持ちよかったのか?」  その膨らみを愛しそうに見つめながら、匡一は尋ねた。  そんなわけあるか、と即座に叫ぶ昂大だが、男の身体というのはこういうときに嘘がつけない。快感を得ていたことは一目瞭然だった。  くっくっと匡一が笑う。 「あんまり可愛い強情を張るなよ。意地悪したくなる」  甘い声で囁き、耳許にちゅっと口づける。昂大は身を竦めて悲鳴を飲み込んだ。  するり、とトランクスの中に匡一の手が侵入してくる。両腕を封じられ、脚さえも絡みつかれた兄の脚で抑え込まれている昂大に、その侵入者に抗う術はない。 「お前は本当に可愛いなぁ」  トランクスから引きずり出した小さなペニスを見つめ、匡一は微笑む。陰毛もまだ薄っすらとしか生えておらず、包皮もしっかりと被っている幼いその姿は、中学三年生のものにしては少し成長が遅いが、まだ子供のようで、本当に愛らしかった。  耳朶まで真っ赤に熱くしている昂大に口づけながら、その可愛らしいものをゆるりと扱く。細い肩が大きく跳ねた。  あっ、と昂大の唇から震えた声が零れたが、それ以上は言葉にならなかったらしく、華奢な身体がカタカタと小刻みに震えている。  可愛い、と匡一はまた微笑んだ。 「まだ弄らないよ、こちらは」  ズボンとトランクスを膝のあたりまでまとめて引き摺り下ろし、局部を完全に露出させる。外気に触れたことで昂大の身体がぶるりと一瞬震えたが、まだ耳まで赤い。  ベッドの支柱に渡していた定規を引き抜き、怯えているのか、抵抗を忘れてしまった昂大の身体を抱えて胡座を掻いた脚の間に座らせ、後ろから抱き竦める。 「胸だけでイケるようにしてやる」  そう囁いた声が、兄とは別人のもののように聞こえて、タカは大きく身震いした。
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