新たな一面

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新たな一面

 次の日。すみれは喉をいためて歌が歌えないと訴えた。声が治るまでみずほ先生としばらく行動をともにすることになる。   「こんにちはッ。あらためまして。  やました、みずほといいます。  きょうから、すこしのあいだ、すみれ先生と  一緒にりす組さんにいます。  よろしくね」 園児たちに拍手をもらい、自己紹介を終えた。 みずほ先生は園児たちから引っ張りだこ。かけっこしたり、お絵かきしたり、あやとりしたり。手を繋いで歌を歌ったりも。  そして何日か経ち、すみれの声もだいぶ良くなったが、みずほ先生にはあと少しりす組さんに居てもらうこととなった。  ある土曜日の夕方。先生たちは早く帰った。 「みずほ先生、たまにはご飯でもどうですか」 「わ、すみれ先生とご飯なんて初めてですね! 行きたいです!」 「じゃあ先週駅前に出来たパスタ屋さんはどう?」  2人は意気投合して幼稚園から20分ほど歩くパスタ屋に向かった。 「私はカルボね」 「カルボナーラですか?」 「うん。初めて入る店はまずはカルボって決めてるの」 「じゃー私はトマトクリームソースのにしようかな」  ドリンクバーの飲み物を取りに行き、ひとくち飲むとやっと気分も落ち着いた。 「みずほ先生って保育士さんに向いてるよね。あんなに子供達の心が理解出来るなんて。この間なんか、ヤッくんが何も話さず落ち込んでいたとき、みずほ先生すぐヤッくんの悩みを言い当てたじゃない。アレすごいよね!」  アイスコーヒーにシロップを入れ、ストローでクルクル回しながら、みずほ先生が言った。 「すみれ先生、握手してもらえますか?」 ーー突然なにをいい出すのかと思ったら。  みずほ先生の真剣な表情に、すみれは何も言葉を返せず、黙って右手を差し出した。
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