29人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
握手は数秒間。みずほ先生は握った手を離さなかった。
じっと見つめるみずほ先生の真剣な表情は、どこか何かを探っているようにもみえた。手を離してからもしばらく黙っている。
「すみれ先生。27歳って言ってましたっけ」
「そう。先月27になったばかり」
「すみれ先生には選択肢が4つあります。1つは2年後に公務員と結婚。2つ目は塾の講師、3つ目は8年後に玉の輿婚です。旦那の仕事を手伝うようになり一生働きますが、お金には困らない。4つ目は料理教室の先生になります。どれがいいですか?」
「ちょっと待って。どういうこと?」
「すみれ先生のこれからですよ。この4つは、頑張ればどれも叶う道です」
「わたしが? ほんとに? そりゃー玉の輿に乗れれば嬉しいけど、8年後でしょー? 長いなぁ。保育士という選択はないの?」
「はい。言いにくいですが、保育士には向いてません」
「あぁーー、やっぱりィー? そっかー」
ちょっと残念そうに肩を落とした。
「でも人と関わる仕事は向いているので、塾の講師でも料理の先生でも」
「っていうかさ、何でわかるの? 占い?」
みずほ先生はボソッとトーンを落として話し始めた。
「わたしは思考の中で未来を行きき出来ます。握手したときすみれ先生の未来をいくつか見てきました」
(ーー未来のわたしを見に行ったと?)
「チャンネルは4つです。どれか興味のあるものがありますか?」
「うん。料理は好きなんだ」
「ではその道へ進むといいです。すみれ先生に道がついていきますから、保育士は早めに辞められた方が」
「それでみずほ先生自身は保育士がいいと?」
「はい。いくつかある中から決めました。でもひとつのところに長居は出来ません」
不思議そうにしているとこんなことも言い出した。
「例えば、今日アルトくんと歌を歌うとき手を繋いだのですが、アルトくんにはピアニストという強いものがありました」
「えぇーー? 凄いじゃん。教えてあげたら?」
「私がこれを教えてあげられるのは1年で5人までです。もし今の話をすみれ先生がアルトくんにすれば、私はすみれ先生の他にアルトくんの数も認識されてしまいます」
最初のコメントを投稿しよう!