寂しさの腹いせ

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「オレはお前らに仕返ししてやる!   これを受けてみろ! オラオラオラーーっ!   まくう……ほういだん!」  ヨウスケはリュックから黒っぽいものを沢山つかんでバンバン投げつけた。  キャーーッ! ウワァーーッ!  ヒャァーー!  バタバタと足音をさせて園児たちは逃げ回った。ヨウスケは入口付近にいてみんなを見回す。リュックに入れてきたのはゴキブリやヘビのおもちゃで、それをワシづかみにしてみんなに向けて投げつけていた。  イヤーーッ! キャーッ!  逃げ回って園児同士ぶつかる者、着ているスモックのポケットに運悪くクモのおもちゃが入ってさわぐ者。  虫が大嫌いなすみれ先生も園児と一緒になって逃げ回っていた。 「ィ…ヤァーーッ! 投げないでェー! あしーッ。足で踏んづけッ! ともちゃんどいてェーー! ウャァーーッ!」 「オレは許さねぇー、ぶんまけてやる!」  リュックからカエルやムカデのおもちゃが飛んでくる。 「ヨゥーーちゃん! ヨゥーーちゃん!」  すみれは足元大パニックで、飛んでくる方向と足元にあるセミやカマキリなどのおもちゃを踏まないよう、目線が常に泳いでいた。  その踊るような動きは誰よりも大きく、若いとは思えない程のすごい形相で、喉が潰れんばかりの叫び声をあげている。  顔面めがけて飛んできた虫に驚き、声は既にダミ声になって叫んでいた。 「ヴォーーちゃん! ヴォーーちゃん!」  辺り一面虫だらけ。泣き出す園児、フードにスッポリ入った虫を取り出せずにフードをバタバタして走り回る園児。 「まだまだー! ギャリックファイヤー!」  ヨウスケはパックに詰めてきた本物のダンゴムシをパックごと投げつけた。部屋には丸くなったダンゴムシがコロコロと転がりながら散らばっていく。 「出たーーッ! ほんもの! ほんものー! ウギャァーーッ!」  すみれの人一倍大きな声が園児たちの恐怖を更に大きくしていった。
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