寂しさの腹いせ

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「すみれ先生、あとの片付けお願いしますね」 「えーー、ムリムリムリ! だって本物が…」 「せ・ん・せ!」 たまき先生の口調が強くなった。  この部屋の状況において園児たちの泣き声と騒ぎ声に、すみれも泣きそうになる。  ヨウスケとみずほ先生が園長室に行くと優しげな園長先生の姿があった。 「ヨウスケくん、今朝はずいぶんハデにやらかしたわね。だけどあれだけのオモチャ、よく家にあったわねー」 「あれはオレのコレクションだ。虫、大好きなんだ! みんなは怖がるけど、よく見るとチョー可愛いんだよ!」 園長はしゃがんでヨウスケと目線を合わせた。 「そんな可愛い虫たちを投げてもいいの?   きっと痛い思いしてるんじゃないかしら」 そういってヨウスケの反応をみた。 「ダンゴムシは本物だったんでしょ? いくら固い皮で丸くなってるからといって、投げつけたら可哀想よ。みんなに踏まれて潰れてるかもしれないわ」  ヨウスケはハッと顔を上げ、園長の顔を見るなり目を潤ませた。 「ヨウスケくんはキズついたのよね。お弁当箱がなくなったのを自分のせいにされて」 涙が溜まった瞳でウンウンとうなずく。  同じりす組のケイタが園長室にちょこんと顔を出した。 「あら、どしたの?」 たまき先生が気づき、声をかける。 「ゴメンね、ヨウちゃん。みんなヨウちゃんにゴメンって言いたがってるよ」  その一言でヨウスケは今までグッと我慢してた思いが一気に爆発して大声を出した。  ウワァーン! ウワァーン!
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