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「もう、頭がパンクした……」
「おーい、ゆき、大丈夫か?」
「だ、いじょ、ぶな、わけ、ないよー」
ぷしゅーと音を立てるようにゆきがノートの上に突っ伏した。
やっぱり方程式は普段のゆきには難しかったらしい。
本当にどうして学年トップクラスの点数をとっているのかわからない。
「じゃあゆき、休憩にするか」
「やったー」
突っ伏しながらゆきは両手をあげて喜んだ。
と言ってもおやつは食べたし。
甘くないけど軽く食べられるもの。
「ゆき、お煎餅でいい?」
「もちろん!」
お煎餅に合うようにお茶を用意してゆきのもとまで運ぶ。
そういえば、このお茶は不良っぽいゆきの友達にも出したものだ。
僕はゆきの向かい側の椅子に座って聞いた。
「ゆき、ゆきの友達の不良っぽい子って名前なんて言うの?」
「えっと、瀬戸柚季ちゃんかな?」
「髪をちょっと茶色く染めてて、乱暴で男の子っぽい口調で、決まってんだろが口癖っぽい」
「ゆずだよ、それ!」
「瀬戸柚季って言うのか」
「うん。会社の社長の娘さんで髪を染めてても怒られないらしくて、口調もあれだからみんな近づかなかったんだ。それで、避けられてる人同士友達に」
「悲しくなるからもう止めよ」
「それで、どうしてゆずのことを聞いてくるの?」
「ゆき、この前瀬戸さんのこと話してたじゃん」
「え、そうだっけ?」
「忘れたのか?」
「わ、忘れてないもんねー」
ゆきの自尊心を利用して上手く誤魔化せた。
そして、瀬戸柚季というのか。
確かに、瀬戸興業と言えば、昨日行ったT遊園地にも協力とかなんとかしていたような。
名字も同じだけど、あんな不良が社長令嬢なんて信じられない。
ゆきが真面目な顔で言うんだから本当なのだろうけど。
ゆきのこの様子だと、瀬戸さんはゆきにまだ何も話していないらしい。
よかったような、よくないような。
「ゆき、付き合わないか?」
「……へ?」
僕の口から自然にそんな言葉が出ていた。
「えぇぇっ、まこ、どうしたの!?」
ゆきは赤くなりながら言った。
「付き合おう。だめ?」
「…………………………………………いい」
ゆきはもじもじもじもじしている。
そして、いい、と一言言った。
「じゃあ、ゆきと僕はいわゆるカレカノか」
「まこ、嘘じゃないの?」
「僕が嘘つくわけないじゃないか」
「~~~っ」
そうしてゆきと僕はカレカノになった。
僕はこれで良かったと思っている。
ゆきが幸せそうだから。
僕も、幸せなはずなんだ。
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