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彼女の嘘は美しい
「まず何から話そうかしら。
やっぱり、主役である四月朔日ゆきからでしょう。
四月朔日ゆきは、嘘つきよ。
わたしは嘘も嘘つきも大好きなの。
だから、四月朔日ゆきのことも好きだったわ。
四月朔日ゆきがここに来たのは、三月の終わり頃だったかしら。
どこかの掲示板でも見て来たのでしょうね。
『わたしの未来と恋愛運を見てください』
四月朔日ゆきはそう言ったわ。
と言っても、あまり占いを信じている様子はなかったのだけれど。
四月朔日ゆきの未来は、あと一ヶ月で死ぬ。
四月朔日ゆきの恋愛は、余命を言えば成就する。
それが占いの結果だったわ。
あら、何か言いたいことがあるの?
わたしが喋り終わったらいいわよ。
話に戻るわね。
わたしはそれを包み隠さず伝えたわ。
それで、四月朔日ゆきは上手に貴方を捕まえたようね。
四月朔日ゆきは、表面上の性格ほど頭は悪くないの。
頭の悪さは四月朔日ゆきの処世術の一つなのね。
でも、嘘は四月朔日ゆきの習性だった。
ウサギが寂しくて死ぬように。
四月朔日ゆきは嘘をつかないと死ぬようね。
でも、四月朔日ゆきは貴方のことを愛していた。
それは間違いないとこの占い師が保証するわ。
それを心に留めるかは貴方次第だけれどね。
まあ、そして四月朔日ゆきは貴方と付き合った。
しかしそれを妬んだ親友によって、一ヶ月後に殺された──嘘をついても死んだわ。
憐れね。
え、四月朔日ゆきの嘘が何か?
話し終わるまで話すなって言ったわよね。
まあいいわ。
それはね、貴方と離れないために自分でも信じていないような余命を本当のことのように言ったことよ。
四月朔日ゆき自身は無自覚だったかもしれないけどね。
わたしの話は以上よ。
何か質問はあるかしら?」
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