親友

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「あー、おいしかったー!!」 コンビニで買ったプリンを食べて満足気な顔をしている彼女。 「こんな時間によくそんな甘いもん食えるな。太るだろ。」 時計は9時半を過ぎている。 「うー、、、確かに。でも、食べたかったんだもん!」 そう言って、居間で、クッションにもたれて、くつろぐ彼女。 家でくつろぐ響は見慣れているものの、その姿を見ると、毎度、嬉しくも思う。 背中にしているクッションも、響が欲しいと言ってホームセンターで買ったものだ。 家には彼女の物が増えていて、響の存在を至る所に感じる。 自分の家ではあるが、自分1人の家ではない。 2人でいる事が自然になってきている証拠だろうな。 ふっと笑みがこぼれてしまう。 プリンを食べ終えたと思ったら、今度はテレビに夢中になっている彼女。 「風呂入ってきたらどーだ?」 「んー、これ見てからにする。」 毎週見ているドラマの最中か。 「録画もしてるんじゃねえの?」 以前に途中で見逃したことがあって、俺の家のテレビで毎週録画にしてある番組だ。 「そうなんだけど、続きが気になるんだもん。」 そう言って、響はテレビに見入っている。 流行りの俳優が出ていて面白いらしいが、俺にはあまり興味がない。 「んじゃ、俺先入ってくるわ」 そう言い、着替えを持って、風呂場に向かおうとした時だった。 ピンポーン!ピンポーン! 連打される玄関のチャイム。 テレビを見ていた響も、びっくりした顔で玄関の方を見る。 「誰だ?こんな時間に。」 「誰??」 ドアの小さな穴から外を覗くと、そこには、奴が立っていたんだ。 「浅葱だ」 「え!?!?浅葱先生!?」 びっくりしている響。 いつまでも、ドアを開けない俺にしびれを切らしたように、玄関先から、声が響く。 「耕作!!いるんだろー??」 、、、、 まさか、こんな時間に連絡も無しにやってくるとは、、、。 響も動揺している。 「隠れた方がいい??」 この状況。 確かに、浅葱がすんなり受け入れられる状況では無いのは確実だ。 「とりあえず、奥に行ってて。」 「うん、わかった!」 そう言って、響は背もたれにしていたクッションを持って、玄関ドアから見えない位置に隠れた。 すぐに帰ってもらうつもりで、ドアを開けたのが間違いだった。 居留守を使えば良かった、、、と思ったのは、後の話。 ガチャ。 「なんだ!いるじゃん!!車あるからいると思ったんだよー!」 ドアを開けると、顔を赤らめている浅葱の顔が目に入る。 「何しに来たんだよ。おまえ、飲んでるだろ。」 浅葱の手からは、パンパンに詰まったコンビニの袋がぶら下がっている。 中にはビールらしきものが数本入っているのが見える。 「いやー、今さー、合コンだったんだよー!でも、そんなに飲んでないんだよ!だから、ちょっと飲み足りなくてさぁ!」 なるほど。 どうせ、合コンの話を聞いてほしくて、うちに寄ったってところだろう。 だが、勝手に来られても、家の中に上げれる状況ではない。 「連絡なしに来られても困る。帰れ、帰れ。」 玄関先でなんとか追い払おうとするが、なかなかしぶとい。 「ほんのちょっと付き合ってくれるだけでいーからさぁ!」 「もう飲んでんだろ。いーだろ、それで。」 「なんだよー!冷たくないか?おまえ!」 玄関で浅葱と押し問答をしていると、浅葱の目が、ふと、玄関にある靴に止まった。 玄関には、女物のサンダルが揃えてある。 それを見て、浅葱が興奮している。 「もしかして!彼女きてんの??」 靴を見られてしまった以上、嘘をつける訳もなく。 「そうだよ。だからまた今度な。」 まぁ、彼女の靴を見た以上、この場を察してすぐ帰るだろう。 そう思った俺が甘かった。 浅葱は、ドアを閉めようとする俺の手を止めた。 「マジ!?!?。彼女来てんの!?紹介してくれよ!!」 と、半開きのドアを、全開にしたのだ。 「はぁ??」 「おまえは俺に彼女を紹介する義務がある!」 「はぁ?義務って何だよ」 何を言ってるのか。 「紹介してくれよ!」 ノリノリになって玄関先で騒ぐ浅葱。 紹介しろと言われても、、、。 響を紹介するのは、、、。 ためらう自分がいる。 19歳の彼女を見せたら、どうなる? しかも、元教え子だ。 俺が19歳の元教え子と付き合ってると知ったら、、、。 浅葱は倫理的概念というやつがある。 ののしられて、説教されるのが目に見える。 「早く会わせろよ!紹介してくれるって言ってたじゃん!楽しみにしてたんだよ!」 玄関先で早く早くと、急かす浅葱。 少し考える。 まぁ、この先こいつには避けては通れない道だろうが。 響のことは、浅葱にはいつかは会わせようとは思ってはいたが。 だが、急すぎる。 響も動揺するだろう。 どうしたものかと考えても、目の前の浅葱は、一歩も引く様子はない。 仕方ない。 腹をくくるか。 「ちょっと待ってろ。今聞いてくるから。」 そう言って浅葱を玄関の外に待たせて、居間の隅に隠れている響のところへ向かう。 「浅葱が、お前のこと紹介してくれっていってるんだけど、おまえ、どーする?」 「ええ??」 驚く響。 まあ、そうだよな。 そういう反応になるのもわかる。 「大丈夫なの?」 響が心配そうに聞く。 「さぁな。」 こればかりは俺もわからない。 「だって、、、色々ばれちゃうよ?」 2年も前の事だが、予備校で、響は浅葱に会っている。 浅葱が、俺へ連絡先の紙を渡したのが、響だ。 予備校には、沢山の生徒がいるだろう。 あいつも響の事を覚えているかはわからない。 だけど、隠し通せる事じゃない。 紹介するのなら、浅葱には真実を伝えるつもりだった。 「浅葱には、隠さずに言うつもりではいるよ。 どうせ、下手に隠しても、いつかはわかることだしな。」 「、、そうだけど、、、。」 不安げな表情をする響。 「なんとかなるだろ。」 ここまで来たら、隠せようが無い。 俺も説教される覚悟を決めないとな。 「わかった。コウにまかせる。」 響も不安げではあるが、なんとか納得をしたようだ。 玄関先へ向かう。 ドアを開けると、今か今かと、目を輝かせている浅葱。 「いーよ。紹介するわ。とりあえず中入れ。」 「マジ?紹介してくれんの??やったー!」 酒が入って、少しいい気分になっている浅葱を家の中に入れた。 さぁ、どーなることか。
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