親友

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「おじゃましまーす!」 「会ったらすぐ帰れよ。」 俺の言うことも無視して、家の中にズカズカ入っていく浅葱。 居間には、クッションを抱えたまま立ち尽くす彼女。 「どーも!こんばんわ!耕作の友達の浅葱です!いやぁ、ごめんねー。こんな夜遅くに。」 浅葱はそう言いながら、居間に入っていき、缶ビールやら入ったコンビニの袋を居間のテーブルにどさっと置いた。 響を見てどんな顔をするのか。 少し冷や冷やしている自分がいる。 「、、、こんばんわ。島田響です。」 戸惑いながらも、自己紹介をする響。 響の姿を見た浅葱が一瞬止まる。 気づいたか? 浅葱は響の顔を見るなり、 「なんか、若くないか!?!?」と、俺の顔を見て言う。 Tシャツに、ショートパンツ姿の響は、確かに若く見える。 「若いよ。」 「そうだよなー!年下って言ってたもんなー!!。」 そう言いながら、居間に座りこんだ浅葱は、 袋からビールを取り出し、缶を開けようとしている。 気づいてないのか?? 「まあ、2人とも立ってないで座んなよ!」 自分の家のような振る舞いをする浅葱に、少しイラ立ちを感じる。 「おまえ、誰の家だと思ってるんだよ。」 「まあ、いーじゃん!いーじゃん!!」 「よくねぇだろ。」 なんだか、浅葱のペースに巻き込まれていっているようで、腑に落ちない。 響も、独走する浅葱についていけずに、クッションを抱えて立ちつくしている。 急に来られて、紹介しろって無茶な事言われてもなぁ。 まぁ、浅葱と響の間に入って、どうにか取り持つしかねぇか。 仕方ない。 ふぅっとため息をこぼしながら、座椅子に座る。 「とりあえず、おまえも座ったら?」 響に声をかける。 「、、うん。」 そう言って、俺の横に静かに座る響。 3人がとりあえず座ったところで、浅葱が爆走する。 「耕作にこんな可愛い彼女がいたとはなぁ!! 耕作も早く紹介してくれよー!彼女、22.3くらいか?とりあえず、彼女も飲もうよ!」 そう言って、浅葱は缶ビールを開け、響の前に差し出した。 その缶の上にさっと手を置き、浅葱に突き返す俺。 「??。何?みんなで飲もうぜ?」 不思議そうな顔をしている浅葱に、俺は爆弾を落とす。 「未成年」 俺のその言葉に、浅葱は目を見開く。 「はい?」 少し酒の入っている浅葱にはすぐには理解できないようで、もう一度繰り返す。 「未成年」 少し間が空いて、浅葱が騒ぎ出したのは言うまでもない。 「はぁ!?!?嘘だろ!?未成年!?!?」 そう言って俺の顔と、響の顔を交互に何度も見る。 「ほんとに未成年!?!?いくつ!?」 浅葱は信じられないという顔で響に聞く。 「、、、19です。」 うつむき、困惑した表情で返事をする響。 「ええー!?19!?!?マジ!?!?。嘘だろ!?未成年じゃん!!」 慌てる浅葱。 「だから、酒はダメ。」 俺がそう言うと、浅葱は目を丸くしている。 そして、矛先は俺に向き、、、。 「耕作!おまえ何やってんだよ!!!嘘だろ!?前に付き合ってるって言ってた彼女だよな!?!?」 「ああ。」 「だめだ、俺、頭おかしくなってきた。」 そう言い、浅葱は頭を抱え始めた。 相当混乱しているようだ。 「付き合ってどんくらいだっけ!?!?けっこう経つよな!?!?」 「2年は過ぎたな」 俺が冷静にそう言うと、更に爆発する浅葱。 「嘘だろ!?おまえ、2年前っていったら、彼女、高校生だろ!!耕作、おまえ、大丈夫か?正気か!?」 「正気だよ。」 タバコをふかしながら、俺は至って冷静に言う。 「耕作!!それは犯罪だろ!」 犯罪者扱いかよ。 まあ、浅葱にそう言われるのも、想定内だが。 「犯罪じゃねえだろ。」 抵抗してみるが、浅葱は、酔いも覚めたようで、俺に正論とやらをぶつけてくる。 「高校生だぞ?!。ダメだろ!!おまえ、大人として、人の道ってもんがあるだろーが!!」 やっぱりそうきたか。 人の道、、、ねぇ。 予想通りの反応だ。 確かに、返す言葉もない。 事実だから、、まぁ、仕方ないが。 タバコを吸いながら、浅葱の正論とやらを黙って聞く。 俺たちのやり取りを、隣で響は申し訳なさそうな顔をして俯いて聞いている。 「おまえは絶対そんなことしないと思ってたのに、、、。」 怒っていたかと思えば、今度は何故か泣きそうな顔をし始める浅葱。 俺のことを、一体何だと思っていたのか。 俺はそういう事を絶対しない男だと思っていたようだが。 まぁ、確かに、前の自分なら高校生と付き合うなんて自分でも信じられなかったからな。 浅葱の気持ちはわからなくもない。 だが、黙って聞いていると、散々な言われようだ。 「なんだよ。聖人君子じゃなくて悪かったな。俺はそんな素晴らしい人間じゃねえよ。だいたい、こうやって2年も付き合ってんだから、おまえに犯罪者扱いされる覚えはねぇよ。」 もう怖いものはない。 正論を突きつけられても、それが全てだとは今はもう思わない。 響と出会ってから、俺は変わったんだろうな。 倫理論、理想論、聖人君子論。 浅葱の言うこともわかる。もっともだと思う。 確かに常識からかけ離れた事をしているのは事実だ。 だが、それが全てではないということを、俺は身をもってわかっている。 俺の言葉に愕然としている浅葱。 もう、ここまで来たら、隠す必要もないか。 全てを打ち明ける覚悟ができた。 「おまえ、昔、会ってるよ。」 「は?」 浅葱は目を丸くしている。 「記憶にないか?」 俺がそう言うと、浅葱は響の顔をじっと見た。 だが、まだ気づかないようだ。 2年も前だしな。 二年前と比べたら、少し大人びた響。 まあ、気づかないかもな。 「どこかで会った??俺と!?いつ!?」 「あ、、前に予備校で、、、。」 小さな声で響が答える。 「予備校??」 少し考える浅葱。 そして、じっと響を見て、しばらくして、 急に、「あーーー!!!!」と、浅葱は大声をあげる。 思い出したようだ。 「もしかして、俺が耕作に電話番号教えた子!?」 「、、、はい。」 「あーーーー!!あの時の!!」 浅葱のテンションはかなり高くなっている。 「夏期講習かなんかに来てたよね!?!?」 「、、、はい。」 「やっぱりそーだ!!よく見たら思い出したよ!!。そーだ、あの時の子だ!!。携帯の紙渡したよね??。それからだもんな!俺と耕作会うようになったの!懐かしい!! でも、あの時、耕作のこと、高校の担任だとか何とか言ってなかった??」 「、、、はい。」 思い出したか。 まぁ、よく、そこまで覚えているなと、浅葱の記憶力の良さに関心してしまう。 少し考えて、浅葱は俺の顔を見た。 「ん??、、ってことは、、、??おまえ、まさか!!高校の教え子ってことか!?」 やっと状況を飲み込んだらしい。 「まぁ、そうだな。」 淡々と答える俺。 「あの時、すでにもう、付き合ってたってことか!?!?」 目を丸くして、俺に問いかけてくる。 「そーだな。」 浅葱の説教がまた始まるのかと思うとうんざりするが、ここは黙って聞いておくかと、観念する。 「教え子!?!?。教師と生徒ってことだろ!?。」 「そーだな。」 浅葱の頭はパンクしたようだ。 「なんでおまえ、そんな冷静なんだよ!!。俺。マジで頭おかしくなってきた。耕作、嘘だろ!?おまえ、自分の生徒と付き合うって、1番ダメなやつじゃん。おまえ、なんで生徒と付き合ってんだよ!!。耕作、おまえ正気か!?!?」 一番ダメなやつか、、、。 タバコを灰皿に押し付けて、ふうっとため息が出た。 響は肩をすくめて下を向いている。 彼女の前だ。 浅葱の言うことは確かに正論だが、彼女の耳に入っているということを忘れていないか? そろそろこいつのうんちくに、歯止めをかけるか、、、と思ったその時だった。 隣で、大人しく浅葱の罵声を聞いていた響が。声を上げた。
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