親友

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「あのっ!違うんです!私が勝手に追いかけて、、、だから、もともとは私が悪くて!。だから、先生は悪くないんです!!」 そう言って、懸命に弁解する響。 俺も急な響の発言に驚く。 浅葱の話を聞いていて心苦しくなったんだろう。 俺もそろそろ解放されたいと思っていたところだ。 もういいだろう。 俺たちは間違った選択をしてきたわけじゃない。 俺が何を言われようと構わないが、彼女を巻き込むなら、話は別だ。 響に諭すように俺は言う。 「別におまえが悪いとかじゃねぇだろ。俺も悪い事をしたつもりはないし。誰が悪いとかじゃねえよ。まぁ、浅葱の言いたいこともわかるし、もっともなんだろうけど。」 「そーだろ!?」 そう言った俺に同意を求める浅葱。 だが、それ以上に大切なことがある。 浅葱に向かって、俺は伝える。 「立場関係なく、お互い好きになっちまったんだから、仕方ねぇだろ。ただそれだけの話だ。教師失格だと言われればそれまでだけど、 俺は別に後悔してないし、これからも、こいつと一緒にいる覚悟でいるからな。おまえなら、俺の事もよくわかってるし、俺らの事を理解してくれると見越して彼女を紹介したんだけど。おまえに、そこまで言われるとは、正直残念だよ。」 ここまで言えば、これ以上俺たちにつっかかって来ることは無いだろう。 案の定、浅葱は黙り込んだ。 「わかったよ。耕作、おまえ、本気だってことだな?。」 「そうだよ。本気だよ。」 浅葱の目を見てしっかり伝える。 「結婚も考えてるんだよな?」 浅葱が結婚という言葉を口に出す。 隣で響が顔を赤らめているのがわかった。 「ああ。考えてるよ。まあ、今すぐじゃねぇけどな。」 この先もずっと響と一緒にいたいと思う。 その気持ちに嘘はない。 「そうか、、、わかった。」 俺の本気が伝わったようで、渋々納得する浅葱。 「おまえ、響に謝れよ。彼女の前で、散々な事言ったんだぞ。」 ふうっとタバコの煙を吐き出して俺は言う。 浅葱はバツが悪そうな顔をして、 響の方を向いて、両手を合わせて頭を下げた。 「響ちゃん、、、だっけ?。ごめんね!無神経なこと言っちゃって、ほんとごめん!!ただ、驚いたんだよ!。まさか、耕作が、、、って。響ちゃんを傷つけるつもりはほんとに無かったんだ!ゴメン!。」 「いいんです!!全然!!気にしないでください!」 響も必死に首を横に振っている。 やれやれ、、、。 やっと納得したか。 「じゃあ、俺飲むわ!」 空いたビールに手を伸ばす浅葱に、好きにしろと言う。 「そうか、耕作も結婚まで考える彼女ができたのか、、、。」 独り言のように、ぶつぶつ言いながらビールを飲む浅葱。 「良かったってことだよな!。そうだよな!めでたいってことだよな!」 自分に言い聞かせるように、浅葱はそう言ってグビグビとビールを口に運ぶ。 その姿を見て、響と顔を見合わせ、ふっと笑ってしまう。 響の顔にも笑顔が戻っていた。 「そーだよ。良かったってことだよ。」 そう思っていてくれればいい。 浅葱は変に真面目で、融通がきかない。 真っ直ぐで、ブレがない。 昔から浅葱はそういう奴だ。 だから、俺も本音でぶつかれる。 昔から浅葱は何1つ変わらないな。 ずっと紹介しろと急かされていたんだ。 とりあえず、役目は終わったか、、、と肩の荷が降りた気分でいると、浅葱は、唐突に響の顔を見て、問いかけた。 「でも、なんでこいつなの?」 「は?」 俺が先に聞き返してしまう。 「だって、耕作だよ?こいつと付き合ってて楽しい?苦労してんじゃない??」 「なんだそれ。どういう意味だよ。」 浅葱の言葉にイラ立ちを隠せない。 苦労って何だよ。 「おまえが1人の女と2年も付き合ってるのが信じられないんだよ!。2年だぞ!?」 浅葱はビールを片手に、身を乗り出し俺に食らいつく。 「楽しいです。」 苦笑いを浮かべながら、そう答える響。 「おまえ、ひどくないか?俺のこと何だと思ってんだよ。」 「だって、響ちゃんの年頃なら、もっと他に若くてかっこいい奴山ほどいるだろ。だから、なんで耕作なのかと思って!」 まぁ、確かに浅葱の言うことも一理あるが。 「こいつ、女の子に優しくないじゃん。絶対俺の方が優しいのに!なんで耕作ばっかモテるんだよ!。」 「なんだそれ。だいたいにして、モテてねぇし。」 浅葱の話を聞いていると、ただのひがみじゃねえかと言いたくなる。 「優しいです。すごく、、、。」 響が小さな声で答える。 「嘘だろー?耕作だよー??。本当に優しいのー??辛いことあったら、俺に言っていいからね!!」 ビールを飲んで上機嫌の浅葱は、饒舌になっていて、かなり厄介だ。 「本当に、優しいです!」 酔っ払い相手に、真面目に答える響。 「へぇー。おまえ惚れられてんなぁ!!いーなあ!!」 浅葱はそう言って、俺の顔を見て悔しそうな表情をする。 やれやれ、、、。 そろそろこいつの話でも聞いてやるか。 色々話したいことがありそうだ。 「で?おまえは?さっき合コンだったんだろ?」 俺がそう聞くと、浅葱はよく聞いてくれたと、勢いづいて語り出す。 「そーなんだよ!聞いてくれよ!!俺の話!」 詳しく話を聞くと、二次会に行くつもりで店まで予約していたが、一次会では全く盛り上がらず、相手に速攻で帰られたという結末だった。 「もういい加減、やめたらどーだ?」 話を聞いていると、そんな気がしてならない。 同じような話を聞くのはこれで何度目だ? 「俺だって彼女欲しいんだよ!」 浅葱はいつも真剣だ。 だが、いつも空回りしている。 浅葱の話をクスクスと笑って聞いている響。 まぁ、確かにこんな楽しいネタはなかなか無いかもな。 ビールの缶を1人で二本開けたところで、浅葱が響の顔を見て、唐突に話しかける。 「響ちゃん!!」 「、、、はい!」 「誰か紹介してくれないかな??彼氏欲しい子誰かいない??」 いつものが始まった。 まさか、それを響に聞くとは。 俺も呆れて何も言えない。 「え!?!?」 突然話を振られて、響も驚いている。 「友達とかさぁ!!。誰かいないかなぁ??」 浅葱の押しも強い。 「、、、おまえ、こいつの友達っつったら、未成年だぞ。さっき未成年はダメだの、何だのって散々言ってただろ。」 何を言い出すのかと思えば、、、。 「そーだよなぁ。未成年はやっぱりまずいよなぁ。」 自分で言っておきながら、頭を抱える浅葱。 本当にこいつは、、、。 「じゃあ、ハタチ過ぎの友達とかいない?」 浅葱も懲りなく、響に聞いていて。 「おまえ、もういい加減にしろよ。」 浅葱を止めようとした時だった。 「あ、1人いるかも!」 響が浅葱の悪ノリに乗っかってしまったのだ。 おいおい、、、。 「おい、おまえも。酔っ払いの戯言に付き合わなくていーぞ。どーせ、明日には覚えてねぇんだからよ。」 「でも、1人、バイトの先輩で、彼氏募集中の人いるよ?」 響が真剣な顔で俺に言う。 響の話を聞いて、浅葱も身を乗り出した。 「え!マジで!?!?。今度紹介してよ!」 目を輝かせながら、響に誘う。 「めんどくせぇから、やめないか?そーゆーの。」 俺は全く乗り気がしない。 紹介したところで、めんどくさい事になるのは目に見えているからだ。 面倒な事に巻き込まれるのはごめんだ。 「頼むよー!!」と、響にせがんでいる浅葱の姿を見ていると、情けなくも思う。 28の男が、何やってんだか、、、。 そんなに彼女が欲しいのか? まあ、浅葱はいい奴だし、見た目も悪くないと思う。 だが、女には縁がなく、いいところまで行っても結局振られてしまう。 そんな話を今まで散々聞かされてきた。 原因は、きっと、この女々しさなんだろうが。 「面倒だから、俺はパス。」 「えー、でも、浅葱先生、彼女欲しいって言ってるし!。協力できることがあるなら、してあげようよ!」 何故か浅葱を応援する響。 「そんなの自分で探せばいーだろ。」 人の手を借りても、結局最後は自分自身の問題だ。 そう言うと、浅葱からの猛攻撃が始まる。 「おまえ、ほんとに冷たいな!!響ちゃん、超いい子なのに!!おまえ、俺の事もう少し真剣に考えてくれてもいーじゃん!!。おまえ、自分が幸せだったら、それでいーのか!?。親友が幸せになるのを協力してくれないわけ!?」 あぁ、めんどくさい。 響の一言が、余計だった。 まぁ、響の性格からしたら、浅葱の事を放っておけなかったんだろうが。 それはわかるんだが。 「その子いくつ??」 「2つ上なんで21か22だと思います。」 「何してる子?あ、バイトしてるのか!」 「同じ書店でバイトしてます。大学で獣医学科、将来獣医師になりたいって言ってる先輩で。」 「大学生かぁ、、、。社会人が良かったんだけど、この際、そんな事も言ってられないか!」 「あと2年学校あるって言ってました。」 「あと2年かあ。その子かわいい??」 「私はかわいいと思うけど、どーなんだろう。」 2人で会話が進んでいく。 俺は置いてけぼりだ。 浅葱の顔は嬉しそうだが、腑に落ちない。 「おまえ、もう、やめとけよ。」 浅葱を止めに入るが、全く耳に入っていない様子で、響の話に食い入っている。 響が言ってる先輩ってのは、たぶん、よく会話によく出てくる同じバイトの仲間の1人だ。 顔は見たことがないが、響はかわいいといつも言っている、たぶんそのバイト仲間の事だ。 きっと、その彼女の事を紹介しようとしているんだろう。 俺は知らねえからな、、、。 心の中で呟く。 浅葱の幸せまで、面倒みきれねぇよ。
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