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「じゃあ、響ちゃん、その子のことよろしく頼むね!!」
「聞いておきます。」
散々長居をして、浅葱は勝手に飲みたいだけ飲んで、帰っていく。
玄関で2人で浅葱を見送る。
「早く帰れ。」
「わかったよ!邪魔して悪かったな!」
そう言って浅葱は帰って行った。
時計は11時を過ぎている。
やっと帰ったか、、、。
疲れがどっと出る。
「浅葱先生っておもしろい。」
玄関先で見送った後、響が言う。
おもしろいというか、なんというか、、、。
それにしても、響を紹介するだけのはずが、なんで浅葱に紹介してやる話にまでなっているんだ?
居間に戻って、座椅子に座りタバコに火を付ける。
ふうっ、、、。
浅葱にバイト仲間を紹介するって話。
だいたい、紹介って、どーすんだよ。
「おまえも、浅葱にむやみに紹介とか、面倒なことするなよ。」
何気なく言った俺の一言が、喧嘩の火種になるとは全く思わなかったが、響には、引っかかるところがあったんだろう。
響が、俺の顔を見て、少し不服そうな顔で反論してくる。
「なんで?。だって、浅葱先生幸せになりたいって言ってたし、バイトの人紹介するだけだよ?」
紹介するだけって、、、。
そんな簡単な事じゃねぇだろ。
「そーゆーのはなぁ、人が介入すると色々面倒なんだよ。」
「浅葱先生に協力してあげることが、そんなにダメな事?」
「ダメっていうかよ、そーゆーのは本人同士の問題だろ。外野がとやかく言う問題じゃねえだろ。」
響は俺の言うことに、納得がいかない顔をして、居間に座り、クッションを抱きながら、ボソッと言う。
「なんか冷たいよ、コウ。」
冷たいだ?。
俺は長年の経験からして、人の色恋沙汰に他人が介入してまとまった事がない。
それを諭しているだけだが、響には伝わらないようで。
「あのなぁ、これで、うまくまとまりゃいーけど、うまくいかなかったら、おまえも浅葱もその紹介するって言ってる友達も、周りがみんな傷つくんだぞ。紹介するって言うからには、それなりの責任があるんだよ。そーなったら、おまえ、責任取れるのか?」
その事をわかった上で言っているのか?
「うまくいくかもしれないじゃん。そんなの、会ってみないとわからないよ。バイトの先輩も、彼氏欲しいって言ってるし。もし、それでうまく行ったら、みんな幸せになれるのに。」
みんな幸せだ?
こういう考えがまだまだ子供だと思ってしまう。
その考えが甘いと言っているんだ。
「そんな簡単な話じゃねえだろ。おまえが入ったところで、絶対まとまんねぇよ。そんなの会わなくてもわかる。」
浅葱の性格だ。
どうせ、またうまくいかなくなって、俺に泣きついてくるのが、目に見える。
うまくいかなかったとしても、また次々に同じように誰か紹介しろと言ってくるだろう。
そう考えると面倒だ。
勘弁してほしい。
だが、響は、浅葱に協力したいの一点張りで。
なんで、そこまで、お膳立てしてやらなきゃならないんだ?
俺にはめんどくさい以外の何物でもない。
「めんどくせぇよ。おまえも、そこまで責任取れるんなら、やってやれば?」
つい突き放してしまった。
響も俺の言葉に、不満気だ。
「めんどくさいって。コウはめんどくさがってるだけじゃん。」
ボソッと響が言う。
面倒なのもあるが、それだけじゃない。
考えが甘いと言っているんだ。
それが何故わからないのか。
「おまえも、そんな他人の色恋沙汰にかまってる暇あんのか?就職活動だってあるだろ。」
響から、短大の友達が就職活動を始めたという話を最近聞いていた。
2年の夏だ。
もうそろそろ就職の事も考える時期に入ってくる。
人のことより、まず自分の事だろう。
就職活動の話をもちかけると、また響の地雷を踏んだようで。
「別に何も考えてないわけじゃないよ!」
なんだか雲行きが怪しくなってきたぞと思った時は、もう遅い。
「コウに言われなくても、私だってちゃんと就職の事は考えてるよ!!。浅葱先生と先輩のことも、うまくいくように協力するし!」
こうだと決めたら頑固な性格なのは、よくわかっている。
何を言っても、今はもう無駄だなと早々に切り上げる。
「勝手にしろ。風呂入ってくる。」
そう言って、むくれた顔をする響を残して、俺は風呂場へと向かった。
何を言っても無駄だ。
素直だからこそ、真っ直ぐだからこそ、意固地になる響の性格も、わかっている。
だが、ここまでムキになることはないだろう。
「ったく、なんで浅葱の事で、、、。」
風呂場でふうぅっとため息がこぼれた。
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