絹のような心

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8月11日 三ノ宮 午前11時20分 土曜日の朝に実家の電話が鳴るのは珍しい。 リーンと鳴ると何故かそれが悪夢の始まりだということがわかっているかのように家族全員がビクっとなった。 両親とお腹の大きい妹と、妹の子と5人で暮らしているので雪子が電話に出るしかない。 「 もしもし高田様のお宅でしょうか。 こんにちは、佐藤百合子でございます。 幸太郎さんの義理の姉の。」 「 あー、こんにちは。 お久しぶりです。」 「 お久しぶりでございます。 すみませんが恵梨香さんはいらっしゃいますでしょうか。」 「 はい、少しお待ち下さい。」 いつのまにか隣にいる妹に声を出さずに、 ( 大丈夫?) と、言うと、妹はしっかりうなずいて雪子から受話器を受け取る。
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