第四章 これで恋の障害は、ナシですか?

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「洋子さん、入ります」 少し開いていたドアを一応軽くノックして室内に入った。 足と腕を組んで椅子に座っていた洋子さんは私と一緒に入って来た海斗を見てほんの少しだけ表情を硬くした。 「洋子さん、佐々原海斗さんです」 私はあえてさん付けで呼んだ。何故か呼び捨てで呼ぶことが躊躇われたから。 「初めまして、佐々原海斗です。凪子さんと結婚前提でお付き合いさせてもらっています」 「……」 海斗は洋子さんに頭を下げてとても綺麗なお辞儀をした。 (なんか警察官っていうのがあるからかな……ひとつひとつの動作が機敏だ) なんとなくそんな事を考えていると── 「凪子」 「はい」 「悪いけど彼とふたりにしてもらえる?」 「え」 洋子さんがいきなりそう告げた。 「凪子抜きで話したい」 「え、そ、それは……」 突然のことに驚いた。どうして洋子さんがそういったのか解らなくて(まさか取っ組み合いの喧嘩──なんてことにならないでしょうね)なんて考えてしまった。 普通の男女なら違った心配をするものなのだろうけれど、洋子さんと海斗に限っては間に私が挟まっている状態なので普通の男女で危惧されることの心配はない。 「凪子、俺は大丈夫だ」 「海斗……」 洋子さんの言葉を受けて海斗も私抜きで話をすることに抵抗を感じていないようだった。
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