第四章 これで恋の障害は、ナシですか?

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「心配しないで、凪子。別に彼のことを取って喰いやしないから」 「そういう心配はしていなくて……」 「凪子」 「……」 洋子さんと海斗、ふたりからそういわれては大人しく引き下がるしかなかった。 「じゃあ……フロアで待っています」 「うん、ごめんね。すぐ済むから」 「はい」 にこやかな洋子さんに見送られ私は海斗を残して休憩室を出た。 静かな店内は少し怖いという印象があった。 昼間の賑やかな状態を知っているからそれはなおさら印象深く映った。 (……あれから10分、か) 『すぐ済むから』といった洋子さんの言葉は、今覚えば曖昧なものだと気が付いた。 すぐ済む時間ってどれくらいのことをいうのだろうか。 人によっては5分とか10分。 気の長い人なら30分でも『すぐ済む』範疇になるのではないか。 (奥はずいぶん静かだから取っ組み合いの喧嘩にはなっていないと思うけれど……) いや、そもそも海斗は警察官だ。 いくら恋敵とはいえ暴力沙汰になる事はあり得ないだろう。 かえって暴れる洋子さんに黙ってなすがままになっていそうな気がする。 (うぅぅぅ~~~変な想像しか浮かばない!) モヤモヤする気持ちを持て余していると奥の休憩室のドアが開く音がした。 そして視界に洋子さん、そして海斗が姿を映った。
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