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「おまえが捨てた女を俺が拾ってものにした。ただそれだけのことだろう」
「まさかおまえ、凪子のことを本当は好きじゃないのにただ単に遊ぶ目的でいいように丸め込んだんじゃないだろうな」
「そうだったとしてもおまえには関係のないことだろう」
「! 海斗、おまえいい加減にしろよ! いくらオレが捨てた女だからって、あいつは、あいつにだっていいところはあるんだからな!」
「……」
「泣かせるなよ!」
「──おまえ」
「!」
向かいの席に座っている康彦の胸ぐらを片腕で持ち上げ、そのまま顔の前まで引き寄せた。
「どの口が泣かせるなと言うんだよ。おまえこそ本当にいい加減にしろよ」
「か、海、斗……」
剣呑な雰囲気に気が付いた数人の客が此方をチラチラと見始めたからそのまま康彦をソファに押し込んだ。
そしてそのままテーブルに置かれていた伝票を手に立ち上がった。
「おまえは一応友達だからな。報告したまでだ」
「……」
「だけどそれは凪子ありきでの関係だ。おまえと凪子が無関係になった今では俺とおまえの関係もないことになる」
「……」
「じゃあな、お互い幸せになろうぜ」
茫然とした表情で俺を眺めた康彦は最後、聞こえるか聞こえないかの声で「……幸せにしてやってくれ」と呟いた気がした。
(だからおまえが言うなよ)
所詮俺と康彦は凪子という女の繋がりだけで付き合って来た仲だった。
それが無くなった今ではもう、こいつは俺の人生において関わりのない人間となる。
──初めからたったそれだけの存在だったのだ
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