第三章 釣った魚に餌は、ナシですか?

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第三章 釣った魚に餌は、ナシですか?

──海斗から連絡が来るまで待っていよう そう決めてから既に三日が経っていた。 「澤部さん、電話お願いします」 「……」 「澤部さん!」 「! は、はいっ」 「電話、出て下さい」 「あ、はい」 床に散らばったカットされた髪の毛を掃いていた私の耳に、店長である洋子さんの張りのある声が響いた。 私は慌てて鳴り響いている電話に対応した。 心此処に非ずの私のこんな様子は日に日に目に余るようになったみたいで 「澤部さん、あなたフロアに出なくていいわ」 「…え」 「裏で洗い物に専念していて頂戴」 「…あ、わ、解りました」 一応スタイリストとして固定客を受け持っていた私だったけれど、今の私にお客様の髪の毛を触る資格はないのだと暗に云われた気がした。
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