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お互いに“お前かよ!”と思ったのは間違いない。だが、それでもアシュリーは諦めてはいたのだ。確かに納得のいかない人選だったけれど、恩師が“貴女に足らないものを彼が補ってくれますから”とまで言うのだから何か理由があるのは間違いない。何より勇者に選ばれることそのものが、魔法学校の生徒としては最大の名誉であるのも事実。そしてジョシュアも、性格は気に入らなくても能力的には優秀な人物であることを知っている。この旅の間だけ目をつぶろう、それも仕方ないと――そう思っていたのだ。
魔法学校の敷地を出て山に入り、モンスターと遭遇するまでは。
「……ジョシュア。それ、本気で言っていますか」
アシュリーは怒りのまま、ジョシュアを振り返る。
「貴方の戦い方がムカつくからに決まってるでしょう!闇魔法を使うとは聞いてましたけど、まさかあんなに滅茶苦茶だなんて!」
「はあ?何を言っているんだ。普通だろう」
「あんなのが普通でたまりますか!……私決めましたからね、今後金輪際、バトルで貴方の出番はありません!私が全部一人で倒しますから、どうぞそのつもりで!!」
すたすたと山道をくだっていくアシュリー。後ろで、ジョシュアがややあっけに取られている気配があった。優秀だと聞いていたから少しはアテにしていたのに、なんて見当違いだったのだろう。多少負担にはなるが、それならばこれからのバトルは全てアシュリー一人でこなした方がずっとマシというものだ。幸い、魔法学校にほど近いこの山の中には大して強いモンスターなど出てこないのだから。
――そうよ、絶対任せられない。あんな奴の手なんか借りなくたって、私一人で十分!
ああ、本当に、どうして自分達は二人で組まされる羽目になったのか。本気で恩師を恨みたくなってくる。
「……訳がわからない」
背後から小さくジョシュアの声が聞こえて、それがますますアシュリーの苛立ちに拍車をかけたのだった。
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