痴呆宇宙神

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「カリクスに会いに行こう。頼む、エラル」 「神としては放っておけねえのでぃいす!アースツーは私にも過ごし易い世界なのでぃいす。本来なら神は泰然としているべきだけど、私はこの世界が、あんた達が好きなのでぃいす。カリクスは最深部にいるのでぃいす。急ぐのでぃいす。ジョナサン・エルネスト」 ああ。行こうエラル。 エラルとジョナサンは、神界深部へと進んでいった。 途中、何柱の神との出会いを超えて、エラル達は神界最深部に到達した。 宇宙の只中にポツンと浮かぶ小さな浮島に、ポツンと巨石が積まれていた。カリクスの玉座の代わりだった。 「おかしいでぃすねい。いつもはここにポツンと座ってるはずなのでぃいす。ここにいないってことは他の場所か世界に。でも途中会った神の中にはいなかったのでぃいす。物凄い存在感の強い超大物の政治家みたいなおっさんなのでぃいす」 あ。ジョナサンの鼻がそれを捉えた。凄まじく強い存在感があった。 「おい。おっさんが草むらに四つん這いになって雑草食ってるんだが。こいつは何だ?」 葉っぱをもしゃもしゃ食いながら、眼光だけは鋭くこちらを見つめていた。 これがカリクスと言われれば納得もするだろう。 貧乏草食ってるけど。 「ああ!見つけたのでぃいす!カリクス!何をしてるのでぃすか?」 「ん?おお、そこの神よ。私の食事はどこか?」 「さっき食べたのでぃいす。あー、イーサンいねえといつもこうなのでぃいす」 おい。 「おお、そこにいるのはイーサンではないか。私の住処はどこか」 「え?俺?あんたの玉座っていうか岩ならそこだぞ?」 「そうか。それで、私の食事はどこか?」 「もう食ったんじゃねえか?」 「おお!おおそうであった!それで、私の住処はどこ」 「おおおおおおおおおおおおい!カリクスあれか?!認知症か?!要支援どころか要介護じゃねえか!イーサン何してんの?!」 「あー。あんまり知られたくねえ神の秘密なのでぃいす。カリクスはここ数百年頭がすっかりぼんやりしているのでぃいす」 「見た目と行動のギャップ凄すぎるぞ!こんなに立派そうなおっさんなのに!ステラがボケてるっつったのこれか?!あいつといいカノンといいこんなんと接触してるってのか?!俺の娘達は?!」 「おお。クリステラは()い娘である。クリステラはどこか?おじちゃんが小遣いで銀河を一つあげたというのに。クリステラはどこか?」 「多分アースワンに疎開してるのでぃいす」 「おお。では行こうアースワンに」 カリクスはすっくと立ち上がった。恐ろしい存在感があった。ニュクスを前にした時のような。 「それで、アースワンはどこだ?地球であろうか?それで、地球ってどこにあったのか?」 カリクスのズボンはジョワっと濡れていた。 「そして尿失禁してんぞ!介護する人いないと宇宙で迷子だぞ?!」 「イーサンがカリクスの使いになったのは、そもそも行方不明になったまま忘れられていたカリクスを300年ぶりに発見してアースツーに連れて帰ったからなのでぃいす。カリクスが大人しくなったのはイーサンの介護能力の発揮だったのでぃいす。カリクスの飯を食わせられるのはイーサンだけなのでぃいす」 「ただの介護ヘルパーじゃねえか!この前アカデミーでも学校開設したばっかりだぞ?!高齢者社会の到来があるからってミラージュが言ったから!」 その時、空が虹色に光り輝いた。まるでパルス信号のように光が分断して広がっていった。 「おお。神界会議開始の報であるな。して、議題は何か?」 「あああああ。始まったのでぃいす。アースツー消滅の序曲が。ラグナロクが始まるのでぃいす」 残念そうなエラルの声があった。始まったのだ。神々の黄昏が。星の消滅と新たな誕生が。
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