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な、な、何だあああああああああ?!シャックスううううううううう?!
狂乱した勘解由小路は、主人の悪魔を呼んでいた。
「流石に堪忍袋の緒が切れました。私を覚えてなくてもいい。暴言を吐くのも許します。しかし、私の、私達の愛する娘を愚弄することは許しません。勘解由小路降魔。明日の朝日を拝めると思うのですか?」
「何が!何が娘だ?!きっと12年後に結婚したんだろうさ!だけどお前なんか知らん!何が娘だ?!結婚8年であの成長はおかしいだろうが!」
「情けない。莉里ちゃんの為に、貴方はどれだけ努力したのか。自らの右腕を犠牲にして、貴方は私を妊娠させたのですよ。あの子が産まれた時、どれほど嬉しかったか。どれほど幸せだったか。貴方は、あの時の私達の幸福に唾を吐いたのですよ」
「いや。うん。そんなこと言われてもな。腕か。なくなったらピアノが弾けなくなるしぶ!」
真琴は、勘解由小路を殴り飛ばした。
「ちょ!ぶび!やめ!やめろおおおおおおお!シャックス!シャックスうううう!ガボ!」
「犬も食わないと言うけれど、こういうのは奥さんに任せた方がいいわね」
「杏子!何見てんだ?!元カレの危機に立ち向かえぐばああああああああああああ!ほんとやめてお前!真琴!何泣きながら殴ってんの?!」
「貴方を愛しています。さっき出ていった女悪魔は砂と消えました。言ったでしょう?浮気したら女だけが消え去ると。今決めました。私はこの世の全ての女を消します。地獄で幸せに暮らしましょう?貴方?この世界には貴方と私だけいればいい」
「ゲボお!そんな世界があるかあああぶぺ!どっぼお!がはん!ぶるああああああああああああああああああああああ!!もう、もうやめて、お願いします真琴さん!待て!一つだけ聞かせろ!さっき俺が追い出した莉里はどうした?!」
「精一杯抱きしめて慰めました。今も取った宿で泣いています。莉里ちゃんを話題に出したことで私の怒りと失望は頂点を迎えました。不実な夫に死を。私を見ろ」
殴り倒された勘解由小路は、ぼんやりと天井を見つめていた。
「まあ。しょうがない野郎だったな俺は。俺はお前の目を自発的に見ることはない。見たきゃお前が覗き込め。いいよ。何かそんな気がしている。とにかく顔というか全身が痛い。これだけは言える。地獄だここは」
真琴の手が止まった。
ガイアが、突然何かに思い至った。
「まさか、こんなことがあるのね。ちょっと待っていて。すぐ戻るわ」
「ええ。しかしどちらへ?」
「女の涙。必要なのはそれよ。ヘル!ヘルはいる?!ちょっと用があるのよ!」
消えてしまったガイア。残された真琴は、気を失った勘解由小路を見つめていた。
理由は解らない。しかし、現状を打破し得る女といえば、真琴は一人しか思い浮かばなかった。
今頃、一人で。ママは本当に心配です。
兎に角無事でいて。ママも頑張っているから。
その頃勘解由小路は、殴られすぎて鼾をかいていた。
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