王女瞬殺

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
天上天下唯我独尊が、島原に迫ろうとしていた。 島原は渾身の力で、レーザーポインターを四郎時貞に指向し、雷撃を撃ち放った。 極大化した稲妻は、四郎時貞まで届かなかった。 「無駄ですよ。我が唯我独尊の力の前では。あなたが強ければ強いほど、その力は弱まっていく。それが唯我独尊です。この空間内では私が最高の存在となる。ご覚悟を」 声は突然現れた。 「へーえ。まるでショボい高校球児が子供の草野球チームで強権振るうみたいね。弱いものイジメの能力ってショボ。ホントにザコい」 「き、君は何だ?ここは危険だ。すぐに退避、いや、逃げなさい」 「杓子定規だけど優しいおじさんね。マホちゃんもカホちゃんも今は安全よ。安心して」 そう言って、クリステラは、島原を庇うように立った。 弱いものを守る。勇者の娘のようだった。 「無数の死体の中に一つ増えるだけのこと。幼子諸共地獄に落ちよ」 「ふーん。使い魔召喚」 呼び出されたのは、体長2センチほどの一匹のカナブンだった。その無害な虫は、四郎時貞の顔に向かって飛び、弾けた。 「爆弾コガネ。体内で爆発部質を生成する。けどちっちゃいからネコとかは怯える。それで、この空間内で一番弱い生き物の攻撃を受けて、どう?生きてる?強弱の逆転があんたの能力なら、一番弱い生き物の攻撃受けたらどうなるの?つまり、力関係の完全に逆転した最弱の生物の最強攻撃を受けろ」 天草四郎時貞は、カナブンの爆発で、木っ端微塵に吹っ飛んでいた。2センチのカナブンとは思えない爆発は、跡形もなく四郎時貞を消し去っていた。 「君は?」 「おじさんよりかは少し頭の柔らかいただの王女よ。こういう裏ワザはパパから盗んでる。異世界から助けに来たのよ。約束された滅びは来ない」 「そう。そういうことなのね」 現れた声にクリステラは反応した。 「異世界王女ね。可愛いヤコ様の敵は許さないわ。動かないでね」 ウァレリア・メッサリナ。毒島(ぶすじま)さんと呼ばれた恐るべき悪女は、カノンを抱いて言った。 回復魔法で傷の癒えた島原は、赤ん坊を人質に取った女を睨みつけていた。 「誰だ?お前は?ウァレリア・メッサリナくらいしか思いつかんが」 「そうよ色男。天使さんと清原さんはこの子に殺された。ヤコ様の僕として、貴女を殺す必要があるのよ。動かないでね。さもないとこの可愛い赤ちゃんが死ぬわよ」 「脅しではあるまい。この女は骨の髄まで色欲と流血を好んだ歴史に名高い悪女だ。赤ん坊を殺すなど訳はない」 「悪い女の人だ。ねえカノンちゃん。その人悪いオバちゃんなんだって!どうする?あーーー。凄い気が天井知らずで」 え?ウァレリアは赤ん坊を見た。 「ガウ。とう」 ウァレリアは、強力な気の一撃を顔面に受け、胸から上が消滅し、落ちたカノンを、クリステラがキャッチした。 「悪いモンスターやっつけちゃったね。うっきゃあカノンちゃん。大好きよ」 「うぷー。ママ」 何やらよく解らない内に、警察庁祓魔課は完全に守られていた。 幼児と赤ん坊に滅ぼされたのだ。最悪の敵の攻勢は。 島原は、何とも不条理を感じていた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!