復活のオス蛇ちゃん

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復活のオス蛇ちゃん

地獄の部屋では、今も鼾をかいた勘解由小路の左手を、真琴はずっと握っていた。 若くなっていても、欠けていても、私達を覚えていなくてもいい。 深く。深く愛しています。降魔さん。 ガイアが戻ってきた。 「お待たせ真琴。忙しいわ。アースツーは再生だっていうし、ジョナサンはクロノスと会っているし。まあ今はいいわ。これを持ってきたわ。勘解由小路碧の涙よ。父親への思慕が溢れているわ。あの子は大した子ね。流石は降魔の娘だわ。状況を即理解し、確実な成果を挙げている。どうやっても降魔を助けたいという思いが、この真珠大の大きさに詰まっている」 手渡された碧の涙を、真琴は胸に抱いて強く願った。 降魔の復活を。愛する男の復帰を。 「愛しています降魔さん。莉里ちゃんも緑くんも流紫降くんも碧ちゃんも。誰一人として貴方が戻らないことを望む子は一人もいません。碧ちゃんの涙が、私達全ての思いです。どうか、戻ってきてください降魔さん」 真琴の涙が、碧の涙に触れた。 涙が強い光を発し、勘解由小路の胸に触れた涙は、勘解由小路の体内に染み込んでいった。 勘解由小路は、微かな光を放って目を開いた。 「あああああ。やっぱり起きた時に音楽がない生活は有り得んな。莉里を、俺達の娘をえらく傷つけたようだな。謝りに行こう、左手は動かんが。真琴。おっと!」 泣きながらしがみついた真琴を右手で撫でながら、勘解由小路はガイアを見て言った。 「世話になったな。杏子。今はガイアだっけ?ちょっと俺の代わりに莉里を抱きしめてやってくれ。神に抱かれて嬉しいだろうよ」 「返す返すも非常識ね。どうやったの?」 「ソウルスライサーだっけか?把握した魂を切り裂く刃だが、俺の魂を把握し損ねたんだ。俺の魂は五つに分断された。残る魂を回収しよう。ところで、出てこいシャックス」 初老の地獄の執事が、恭しく控えていた。 「そんな訳で俺は今も健在だ。お前には迷惑をかけた。改めて契約を交わそう。ツンデレ執事よ。俺を助ける為に動いてくれるか?」 「他の者達がどれだけ面従腹背しようとも、私の忠誠だけは決して揺らぎません。参りましょうご主人様。この40年で私も変わりました。ヨタヨタと歩きながら私に向かって小さな手を伸ばした紅顔の坊ちゃんが、今はこんなに優しく立派になられました。私はシャックスにあらず。私はただの三田村でございます。面はここにございます。永遠(とわ)の時を過ぎても、私は貴方様にお仕えいたします」 「解った。こちらこそ頼むぞ三田村さん。悪いがちょっと外してくれ。ああ真琴、泣いちゃって本当に可愛いな。ガイアも出てけ。俺の若さあふれるオス蛇ちゃんを見ていいのは真琴だけだ」 「もう見たくないわ。執念深いんですもの。確かに大きかったけど」 三田村さんが一礼と共に姿を消し、ガイアも出て行った後で、勘解由小路は真琴を抱き上げようとしたが、左手が改めて麻痺していて無理だった。 「やっぱり無理か。ちと工夫が要るな。ああん泣きじゃくってる真琴可愛い。おっぱいをください」 「良かった。良かった本当に。貴方が無事で」 「全ては俯瞰した視界で物事を見ることだ。ちっちゃいガキが騒いでいる。むしろ敵はニュクスだ。あれをどうにかせんと。異世界の神がこっちにいるのが救いだ」 「西京杏さんは貴方の最初の女性だそうですね。よく覚えているようですが」 「肩に爪が食い込んで。あいつは孤独な女だった。強固に管理された資産家庭に生まれ、自由な時間も持てず、やがて家庭教師に乱暴されていた。高校入学時に関係は切れたが、次は俺の番だった。その後ジジイの愛人やってたんだから、中々に壮絶だった。ジジイの子供でも産んでれば異世界に飛ばされることもなかったかも知れんな。ああ因みにその家庭教師だがな。俺が刑事になって最初に逮捕した。有名大学出てたが裏じゃ未成年をレイプするゴミ野郎だった。なあ真琴。それでもあいつに嫉妬するか?あいつは過去と決別し、神になってアースツーを守ってるんだ」 「やはりよく覚えておいでですね。嫉妬の炎が燃え上がっちゃいます。鎮めていただけますか?大しゅきな旦那しゃま」 「もう我慢の限界だ。今日はもうオス蛇ちゃん抜かないからな。かつてない一夜を過ごそう。大丈夫か?」 「ああ。そんな風に言われて真琴はその気になっちゃいましゅ。地獄で赤ちゃん産みまちゅ。オス蛇ちゃんくだちゃい」 「うん!うん!もう離さないぞ真琴!真琴!」 勘解由小路は、真琴に覆いかぶさっていった。
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