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王女瞬殺
警察庁祓魔課庁舎に攻め込んだ軍勢の中心にいた男は、波状攻撃の確かな成果に、満足そうに頷いていた。
「今ここで立ち止まれば、以降その水準のレベルを保つことすら出来なくなる。攻め続けろ。攻めを切らせた時、必ず逆襲される。闇を運ぶのだ。禍女の皇様の名の下に」
その男は宗教戦争を起こした張本人、オリバー・クロムウェル。
ヤコがつけた名は、清原さんといった。
清原さんの邪器はマグナ・カルタ。闇に包まれた一冊の本だった。その力は全てを阻む絶対障壁。つまりは、ヤコ版の護田さんといえた。
ふと気がついた。目の前に赤ん坊がいた。艶やかな黒髪にヘーゼル色のキラキラした瞳。
「うっきゃあ。クイクイ」
赤ん坊の声に応える幼い声がした。
「はーい。お姉ちゃんはここよー。可愛いカノンちゃん」
「お、お前はーー?」
「うん。とりあえず。滅べ悪物。ぺい」
魔王謹製のクリステラ専用兵装、魔剣ザックリキッテモータを振りかざし、マグナ・カルタに向かっていった。
ザックリキッテモータは、マグナ・カルタで完全に防がれていた。
「何だこの娘は。我等が禍女の皇に逆らう蒙昧な輩か?」
「あー。うんそうね。私は、学び舎の皇って感じ?ニュクスを倒しに来たのよ。パパと一緒に」
「我等が客に仇なすのか?ならば死ぬがよい!禍女の皇に逆らう蒙昧に死を!我が絶対障壁に手もなく敗れるがよい!」
「ふーん。パパは一対一なら勝てない相手はいないっていってた。必ずチャンスはあるって。絶対障壁?なら壁ごと焼いてあげる。複合魔法展開」
清原さんの周りに発生したのはシンプルな火炎系魔法だった。ただし、都庁を一瞬で焼き払う威力の極大火炎魔法だった。
複合魔法の要訣は相乗と相剋。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。
クリステラは正確無比に魔法を重ねていく。
父親譲りの器用さと、母親譲りの爆発的瞬発力が、膨大な量の魔法を重ねていった。
「な、何だ?!これは?!」
「一生懸命防いでね。ほい前人未到の256重の極大火炎魔法。多分余波で東京が消滅しちゃうから、あんたにだけ作用するよう弄った。アースワンで流行ってるのかな?一兆度の炎を食らえ」
目視すら不可能な強い強い光と共に、清原さんは消滅した。
256乗の魔法攻撃は、何の余韻も残さず、マグナ・カルタごとクロムウェルを焼き尽くしていた。
ここにいるのはただの子犬ちゃんではなく、異世界アースツー最強の魔法使いになることを神に約束された、栄えある学園国家アカデミーの第一王女だった。
更に、クリステラは群がる爬虫類系妖魅に向かって、極大疾風魔法を薙ぎ払った。
何に守られたのか解らないまま、警察庁祓魔課庁舎に平穏が訪れていた。
「うん?マホちゃんのパパが危ない。行かなきゃ。ちょっと待っててねカノンちゃん。一瞬で戻るから」
クリステラは一瞬で、入り口の死闘に割って入るべく転移していった。
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