冥界の再会

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冥界の再会

冥界の中を、田所紀子は、風間静也を求めて彷徨い歩いていた。 時間の感覚はなくとも、紀子は己の魂の命ずるまま、歩き続けていた。 大丈夫。きっと会えるんだから。静也。 静也の想いは、紀子の中に暖かなものを残している。その暖かさに導かれるように、紀子は川岸を進んでいく。 果ての見えない葦原に、小さな痕跡を見つけた。小動物が進んでいったような踏み荒らした跡があった。 その先に、紀子はついに静也を見つけたのだった。 「うん。やっぱりいたね。静也」 「お姉ちゃんは誰?僕は」 「君はね。風間静也って言うのよ。お姉ちゃんの、そう、お婿さんってことになるのかな?」 「違うよ。そんな名前じゃないもん。僕は翔平って言うの。栗林翔平」 ああ。やっと会えたけど。静也はこのザマだし。今頃東京はどうなってるのかしらね。 紀子は、一人、あどけない小さな少年を見つめながら、深く黙考していた。
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