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「でも、蝶子ちゃんの血がみんなと同じ赤色なら、蝶子ちゃんは、みんなと同じ地球人なんだね」
「……そうね、一応」
メルヘンは自分の切った指先を見つめた。ほそめたひとみが、思いがけないほど深い色をする。
「私ね、結構この星を気に入ってるんだ。他の宇宙人に、むりやり連れてこられたんだけどね。この星の人たちと一緒にいられて、すごく楽しいんだ。みんなとってもやさしい。私の星は、みんなとってもいじわる。絶対に、仲間にならない。私はこの星の人たちが、大好きなんだ」
合唱部の歌声を聴いているのか、そっと微笑んだ。
「でもね、だから、自分がみんなと違うってことが、時々すっごく、めちゃくちゃ、哀しくなるんだ」
──私も。と、安易に共感をするのは、毒よりもたちが悪いように思えた。
「……今は金魚、食べてないの、」
「うん、やめたんだ」
「どうして、窮屈じゃない、」
うん、窮屈。メルヘンは幼いしぐさで頷いた。
「でもね、何かをギセイにして自分だけ潔白でいるのって、いやだなって、思って」
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