血の色は赤

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 死んだベタを埋めるのを手伝ってくれたのは、メルヘンだけだった。かわいそうかわいそうといいながら、他の子たちは死体を気味悪がって、日直だった私に押しつけてきた。ベタを弔うことよりも、犯人さがしに夢中だった。  私とメルヘンは校舎の裏へ行って、二人で小さなお墓を作った。メルヘンの目は、潤んでいたと思う。おびえることなく硬直したベタを手のひらにのせると、黙祷するように瞼を閉じて、それから土へと埋めた。真摯という言葉が、ふさわしい態度だった。  その時だけ私は彼女を見なおして、見なおしたことを、すぐに忘れてしまった。みんなと共有のプロフィール帳に書かれた印象の方が、つよかった。私は鞄から絆創膏を取り出した。 「手、かして」  メルヘンはいわれるまま私に左手を預ける。私は無言で彼女の傷に絆創膏を巻いた。青くにじんだ血が、嘘くさかった。けれどもその色は絶対にあせることなく私の記憶にとどまりつづける。  なぜか嬉しそうに、メルヘンは巻かれた絆創膏を右の人さし指でなでた。 「ねえ、どうして怒らないの、蝶子ちゃん。私、わりとひどいことしたよね、」  自覚があるのならどうしてしたのだと、私は苦笑いしてしまう。しかしそれでも、たしかめたかったのだろう。自分と同じように、違う存在を。 「怒らないわよ。しってるでしょ、私の感情、死んでるから。血の色、青だから」  そういって、あ、と、まちがいに気がついてあせった。だけどメルヘンは怒らなかった。ひょうひょうと、笑って、 「血の色、青でも、感情くらいあるよ」
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