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「嘘……どうして、だって前に血を流した時は、赤だったじゃない。私、たしかに見たもの」
「そうだね。だって、赤くないと、もし怪我をして血が出た時に、みんながびっくりするじゃない。そうでしょ」
腕にまで血がたれるのを、メルヘンは舌でなめて、くい止めた。
「だからね、血を赤く見せるために、金魚を食べてたんだ。それこそ、真っ赤なのを」
私はまだ信じられず、血をなめるメルヘンの口元を凝視してしまう。
「メルヘン、あんた、何者なの、」
へへへへえ、と、唇を青に染めて、メルヘンは笑う。
「私ね、宇宙人。地球外生命体ってやつ。他の星から来たんだ」
「……そう」
彼女は本当に、おとぎ話の登場人物だったのか。なんだか気抜けしてしまう。おどろきもしない。
「うたがわないの、蝶子ちゃん、」
「そうね、妙に納得したから、もうそれでいいよ」
特徴的な奴が枠外のイキモノなら、そんなことはとても当たり前のような気がした。だからみんなにメルヘンと呼ばれても、平然としていられるのだろう。実に得心がいく。他人と違っていることに対して、明確な理由がつくのなら、べつに思い悩むこともないのだろう。
少し、うらやましいことも、なかった。
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