血の色は赤

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 同病相憐むっていのうかな、つめたいものには、とりわけ敏感なんだよね。  だからたとえなんのけなしの白封筒に入っていても、わかった。剃刀(かみそり)の刃は、ひしひしと、つめたい。  まるで気のつかなかったふりをして、机の中にしのばされたその封筒を、開けることなく教室のすみにあるごみ箱に捨てた。  せつなに、あ、と、小さな声が上がる。その、たった一音だけで、誰だか見やぶれる、すごく特徴的な、特徴的というのは、せつせつと損だ。私たちは、誰とも違っていたいとのぞみつつ、みんなと同じじゃないとこわくて仕方のないイキモノ。  声の主は、それでもまだ扉のかげにかくれて、こちらの出方をうかがっているようだった。あの子って、不思議だね、独特だよね。メルヘン。つけられたあだ名には、もちろん悪意がこめられているけれど、当の本人は気がついているのかいないのか、軽々しく呼ばれても、平気に笑っている。  あからさまな疎外よりも、いくぶんかはまし。と、いう打算なのかもしれない。全くの第三者からすれば、あだ名呼びはとっても親しげ。他人の毒をいくらか引き受けなければ、私たちは、つながれない。
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