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青春の意味
「というわけで、まず青春に対する考えをまとめてみましょう。」
場所は俺の家。
もっと詳しく言うと、俺の部屋。
時刻は放課後。
日時は終業式の終わったあと。
今はなしているのは永元。
俺の隣でベッドに横になり、顔だけこちらに向けているのは前久保。
うん、状況を整理したら少し気持ちが軽くなった。
体も少し落ち着く。
ただ分からないのは……。
「何で前久保は、いつも俺の部屋に来るとベッドに乗るんだ?」
ヒラヒラ手を振る前久保。
「いいじゃんか、ここが一番やわらかくて居心地もよくて落ち着くんだから。」
うん、まあ納得できる。
前久保が俺の部屋でベッドに寝るたびに言っている言い訳だからだ。
でも、これで疑問はすべて解決したかといえば、そうではない。
まだ分からないことはある。
それは、
「で、何で俺の部屋に三人集まってるんだ?後、遊んでるわけじゃなく話し合いをしてるのも理解できない。話し合いの内容が『青春について』なのも、分からない。何でだ?」
それに対し、永元がため息をつく。
「それはさっきから何度も言ってるでしょ、青春について疑問があることを言い出したのは吉口君だって。つまり、全てのきっかけは吉口君がつくったってことよ!」
ビシッと俺を指さす永元。
「青春の事が知りたいって言いだしたのは吉口君なんだから、言い出しっぺとして自分の家に友達を呼ぶのは当たり前!」
これも、前久保のベッド屁理屈と同じく何度も聞かされた。
違うのは、納得できない説明だという事だ。
「あのさ、俺は別に、何も青春の事が知りたいとは言ってやしないだろ?ただ青春って何だろうって疑問に思っただけで、どうしても知りたいから家に来いとは言ってな……。」
ここまで言ったとき、永元の両手に力が入ったのがわかった。
長い付き合いだから、ちょっと見ればわかる。
拳を握らないところを見ると往復ビンタをするつもりなのだろうということも、長い付き合いだから推測できる。
だから、俺はだまって頭をさげた。
「ごめんなさい、悪いのはすべて僕です。」
「よろしい。」
にっこり微笑む永元の手から、力が抜けた。
全く毎度のことながら、永元が攻撃の構えをとると、つい敬語になってしまう。
俺が自分の事を「僕」なんて呼ぶのは、怒った永元がいるときだけだ。
「では、さっきの話の続きに入るわね。えーっと、教えてほしいのはみんなの青春に対する考え。まずそれをまとめて……。」
びっしり予定が書きこんである手帳をこっそりのぞきみた俺は、誰にもわからないように小さなため息をついた。
すでに前久保はソファーから身を乗り出しているし、永元もそれなりに楽しそうだ。
どうしてこんなことになったかというと……。
まずそれを説明するには、理科の一学期最後の授業まで時間をさかのぼらないといけない。
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