青春の意味

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「前久保君、吉口く~~ん!助けてーーーーっ!!」 金切り声を上げて、理科室から戻ってきたばかりの俺たちに飛びついてきたのは、読者の皆さんご存じ紅一点の永元だ。 「うわっ、あっぶね!何すんだよ、永元!階段から落ちるところだっただろ!」 文句を言う前久保を、通り過ぎる生徒が「美少女に抱き着かれてるのに、偉そうな奴だ」という視線で見ていく。 「うわ、ごめん!だって、本当ピンチなんだもん!ねえねえ、二人は自由研究何にするか、もう決めたの?教えて教えて教えて!先生はグループでやってもいいって言ってたよね?私のクラスは前の時間が理科で、一学期最後の授業だったんだよ。授業の終わりに、いきなり自由研究をやるなんて言い出すから……私、油断してた。そうだよね、中学校になっても自由研究ってあるんだよね……。ねえ、お願いだからもうテーマが決まったなら一緒にやらせて!せめて一緒にできなくても、アドバイスだけでいいから教えて!お願い!」 「何でそんなに必死になってるんだよ。」 「自由研究なんて、適当にやりゃいいじゃん。」 「そうはいかないわ。どうせ二人ともいつもの癖で、先生の話を聞いてなかったんでしょ?」 「まあな。」 「だって、『自由』だろ?何か適当なテーマ見つけて、やっちゃえば済むんだよ。」 「本当に話を聞いてなかったみたいね。じゃあ教えてあげるわ。まず、自由研究なのに禁止事項があるのよ。例えば、朝顔の観察。夏休みを半分つかわずに終わるような自由研究。」 「半分?」 「一日で終わるような簡単なものは禁止よ。朝顔の観察みたいに小学生っぽいのもNO。そのほかにもいろいろあったわ。もし禁止事項をやぶったら、二学期をつかってもう一度自由研究をするらしいわよ。」 「えーーーーーっ!!」 「ちょ、それってやばいじゃん!」 「他に、優秀作品は校内で選ぶって。でも、優秀作品じゃなくてダメ作品を選ぶようね。」 「何で?」 「選ばれたら、学年とクラスと名前つきで、レポートが県内自由研究展示会に出品されるの。ダメな作品が出品されたら、名前ごと自由研究の内容がわかって、『うわー、手抜き!』とか、『この子の自由研究下手ね』とか思われて、恥をかくでしょ?だからわざと下手な作品を出品させて、学校を甘く見て手を抜いている生徒は後悔させようって計画らしいわ。」 「最悪じゃん!」 「教師、抜け目ないな。」 「だからね、もし恥をかきたくなかったら、禁止事項をやぶったり手抜きの研究をするんじゃないわよ。っていいながら、私も結局迷ってるんだけどね。だって本当に思いつかないもん!下手な作品出して恥かきたくないし、そう思えばそう思うほどろくなアイデアが浮かばないのよ。ねえ、二人とも助けて!一世一代のピンチよ!」
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