青春の意味

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俺たちは、すっかり困ってしまった。 確かにそれなら、手を抜くわけにはいかない。 しかしかといって、今まで手抜き研究しかしたことのない俺たちには、いいアイデアなんて全くうかんでこない。 腕組みをしたまま、お互い考え込んでしまった。 「ねえ!何かない!?」 すごい迫力で迫ってくる永元が怖い。 考え事にも集中できないが、それを口にだしたら命はないような、そうでなくても重傷を負いそうな悪い予感がした。 それにそもそも、俺が永元に口で勝てるわけないんだ。 ちなみに、口が達者な前久保も永元に言い争いで勝ったのを見たことがない。 俺の知らないところで圧勝してるのかもしれないが、永元が口ゲンカをはじめそうになるといつも話を切り上げるから、おそらく勝ったことはないのだろう。 その時、鳴り響くチャイムの音! 気づけば廊下には誰もいなくなっている。 「うわ、時間だ!」 「ヤッバ!」 「というわけで、永元。またな!」 「残念だけど、授業が始まるんだ!」 残念と繰り返しながら、ひたすら教室に向かって走る。 「あっ、こら!待て!授業が始まったって関係ないって、いつも言ってるくせに!いいアイデアが浮かばないから逃げたんでしょ!」 後ろで小型犬みたいにキャンキャン吠えているのは、当然永元だ。 悲しくて悔しいことに言っていることはすべて図星だが、だからこそ戻りたくはない。 あれだけのセリフをたった一秒もしないうちに言い切ったのをいいことに、早口すぎて聞こえなかったというふりを装う。 「こらーーー!!二人とも、待てー!」 「『待て』と言われて待つバカがどこにいる!」 「もう、本当にバカだよ!」 永元が廊下に突っ立ってわめいている。 「いいテーマが見つかったら、教えてよー!!」 同じ階にある自分の教室に行くだけなのに、早口だったためかすべてのやりとりが終了してしまっていた。 「おー!」 片手をあげて答え、教室に滑り込む。 二人を迎えたのは教師のナイフより鋭い視線と、クラスメートの笑い声だった。 そして廊下に立たされたままその授業は終了し、気が付けばあっという間に日は流れて終業式となっていた。
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