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「ふう、なんとか無事に終わったな。」
「ああ……しかし、永元はすごいな。俺は疲れた。」
「俺もだ。視力検査の時や普通にしている時の視力は普通なのに、こういう時だけ5.0くらいになるんだから、永元の目の仕組みはどうなってるんだ?」
「永元のクラスと俺らのクラスは隣のクラスだっていうのに朝会とかこういう式の時は離れるよな?おまけに間にはたくさんクラスが入るし。」
「それなのに、式の間中ずっと鋭い視線を感じた。」
「ああ、俺にはにらんでるところどころか顔すらわかんなかった……っていうか見えなかったけど、こんだけ殺気のこもった視線で、しかも送ってる相手が俺なら、永元以外に見る奴はいないって確信したね。」
「もともと話なんか聞こうとは思わないけど、あの視線のせいで全く集中できなかったのは事実だな。」
「ああ、まったくだ。」
「できるなら本人の前で悪口を言ってくれるかしら?陰口なんて気分が悪い!面と向かって言われたら言い返せるけど、陰口は言われてることに気づかないから言い返せないわ。」
「ああ、まった……うわっ!?」
「な、な、永元!?なんでここに……。」
「私の悪口が聞こえたから、どこの恥知らずかと思って見に来たのよ。それで、自由研究のテーマなんだけどね。」
「ゆ、許してくれ!」
「いや、俺たちだって忙しかったんだ!頼むから勘弁してくれよ!」
「何の話をしてるの?」
「いや、その、実はなんだけど、テーマはまだ決まってなくてさ。あ、でも、こっちにもいろいろと都合があって!だから、そのー。」
「誰が、テーマが決まったかどうか聞いたの?私は、自由研究のテーマが決まったから知らせに来たの。」
「へ?」
なんだか、色々な意味で嫌な予感がする。
「あのね、テーマは青春に決めたわ。当然あなたたちも一緒にやるでしょ?」
「やるけど、青春がテーマってなんだよ?」
「忘れたの?入学式の次の日に一緒に帰ったでしょ。その時に青春ってなんなんだろうなって言ったのは、吉口君じゃないの。」
「……よく覚えてたな、そんな前のこと。」
「当然よ。」
「俺も覚えてた。かなり衝撃的だったからな、印象に残ったっていうか。」
この二人、化け物だ。
俺は心からそう思った。
「というわけで、自由研究は青春のことを調べるわ。今日の放課後、吉口君の家に集合ね。」
ちょっと待った、話がおかしい!
「なんで俺ん家なんだよ!?」
「お菓子とお茶の用意は常識ね。この暑い日だから、できればアイスを所望するわ。」
「はあ!?」
「俺は甘いものより塩分が多めのほうがいいな。ポテトチップス!これで決まりだ!」
「お、おい!ちょっと待……。」
「じゃあ、また放課後に!」
……永元は風のように去っていった。
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