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「でもまずは、青春について国語辞典で調べようぜ。」
「辞典より、実際に青春を味わってる人に聞き込みをしたほうがいいわよ。」
「まあまあ、そういわずに。ほら。」
机の引き出しを浅っていた前久保が、小学生時代に使っていた辞書を差し出す。
「えーっと、人生の中の、春に例えられるような、若くて元気な年ごろ。青年時代……。そうか、やっぱり年を取ると青春じゃなくなるのか……。」
「あれ?青年ってことは、女の子には青春時代がないのか?」
「何か他の言い方をするんじゃないか?」
「ほらね、よけいややこしくなったでしょ?」
辞書を作った人に失礼なセリフを言って、永元が立ち上がる。
「やっぱり、人に聞くのが一番!明日は私の友達を訪ねましょ。メールしておくわ。」
そしていつものごとく、風のように去っていく永元。
その背中を、俺たち二人は、いつものごとく、茫然と見つめた。
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