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「まあ……失敗は誰にでもあるって。」
一塁、二塁、三塁と回ることを知らず一周せずにホームベースに走ってしまったり、空振りばかりしたり、ようやく当たったと思ったら三十センチしか飛ばなかったり、散々だった。
本当にこれが青春なのか?
「あれ、前久保じゃん!ヤッホー!」
肩を落とし、前久保と永元に慰められながら歩いていると、後ろから声がかかった。
振り向いた前久保は、満面の笑みを浮かべる。
「二人とも!めちゃくちゃ青春してるやつを見つけたぞ!」
「えっ、本当!?」
「紹介するよ、信澤清吾(のぶさわ せいご)だ。」
「おー、吉口もいんの?ラッキー!」
「信澤!」
「清吾君!」
俺たちの声がかぶった。
「え?お、もしかして永元?ひっさしぶり!」
「前久保、わざわざ紹介しなくても二人とも知ってるって……。」
同じ小学校出身の男子生徒だった。
五年の時に同じクラスになったのを最後に、六年生を通して今日まで、一回も話していない。
「なんか言いたくなったんだよ。俺だけ誰も紹介できてねえから。」
「さっき青春してるやつがいたっていうけど、何の話?俺のこと?めっちゃ青春してるけど。」
「そうそう、青春について教えてくれ!」
「青春?いいよ!俺が一番最初に青春したのは、やっぱり何といってもバスケ!あまりの楽しさに夢中になったな。」
「今でもやってんの?」
「おう、バスケ部で活躍中だ!」
Vサインを出して歯を見せて笑う信澤。
小学校時代からサッカーが得意で、中学に入学してすぐバスケ部にスカウトされたと聞いた。
「でも、卒業式の日に告白されてから、人生変わったなあ……バスケも青春だけど、恋愛もやっぱ青春の部類だね。」
なんと、一度の人生で二つの青春を経験しているツワモノがいた!
「信澤……。」
「清吾君……。」
「ん?」
『告白されたって本当!?』
二人の声が見事にかぶった。
「あれ、お前らは知らなかったの?」
前久保はきょとんとしている。
だからこいつ、「めちゃくちゃ青春してる」って言ったのか。
「いやー、バスケも恋愛も本当にさ……。」
また熱弁が始まった。
枕辺ゆのの一件以来だ。
「いや、とっても勉強になったよ!じゃあな!」
あわてた前久保が早口で話をさえぎり、俺たちは退散した。
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